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地獄の警備員 デジタルリマスター版のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

5.0
【松重豊が近づくよゆっくりゆっくり】
Amazon Prime Videoで黒沢清の『地獄の警備員』が配信されていたので観た。黒沢清監督作は毎回よくわからないイメージがあるのだが、これはめちゃくちゃ面白かった。

総合商社に入社することとなった女。しかし、彼女が入るビルには不穏な気配が漂っていた。ねっとりと間合いを詰めてくる警備員。個室に連れて行き、イチモツを見せようとするセクハラ上司。営業中にもかかわらずガランと異様にスペースが広い空間。違和感を感じつつ、仕事のキャッチアップをしていく彼女。一方で、警備室にも新入社員が入る。しかし、彼は殺人マシンだった。ひとりまたひとりと血祭りにあげられ、その矛先は女へにじり寄っていくのであった。

本作は女と警備員の2パートを手繰り寄せながら、徐々にビルが殺戮の現場へと豹変していく様子を描いている。なんといっても空間の演出が素晴らしく、エレベーターを待つ人の無機質な感じ。ヤバい警備員を探そうとすると、良いところでモブの人とすれ違うスリル。会社の暗部に向かえば向かうほど、嫌な予感を感じさせる仄暗さが広がってくる様子がたまらない。そして何と言っても、松重豊の淡々と人を殺めていく姿の面白さ。彼は今となっては、フードファイターなイメージが強いが、こんなにも冷徹な殺人鬼を演じられるのかと感動した。
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