ヤギ

1976のヤギのレビュー・感想・評価

1976(2022年製作の映画)
3.0
【東京国際映画祭2022】
独裁政権下の静かな恐怖。
1970年のチリで歴史上初めて民主的に社会主義政権が樹立するが、1973年にアメリカからの支援を受けた陸軍将校ピノチェトが軍事クーデターを起こし、独裁を敷く。反対派への容赦ない弾圧を行った政権は1990年まで続くこととなる。本作はチリ・クーデターから3年後の物語。
冒頭のピンクのペンキをつくるシーンから最後まで、保守的な世のマジョリティを指すであろう青と、社会主義者の象徴であろう赤が象徴的に差し込まれていた。その混ざり合い(ピンク)こそが、当時、そして現在のチリなのだろう。改装中の家も、国家と重なる。
後半からの音楽と、滑らかなフォーカスのカメラ、隠れんぼのシーンの不気味さには惹かれたが、全体を通してどこかパワー不足な印象は禁じえず。このテーマを扱う作品が2022年につくられることに大きな価値があることは間違いないのだが、パブロ・ララインの『NO』はやはり凄まじかったのだと再認識。
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