酸基

理想郷の酸基のネタバレレビュー・内容・結末

理想郷(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

冒頭の一文後、馬を羽交い締めにする男達。村の兄弟の排他的で暴力的な態度はIターン組夫婦、特に旦那の村生活への固執をより強化し、夫を亡くした妻は死亡した旦那の亡霊によって村の生活に羽交い締めになる。他所者と村人、夫婦、親子、誰かが誰かを物理的に、或いは、目に見えない形で羽交い締めにし、対話のすれ違いを招き、やがて文字通りに窒息していく。実にイヤな話だが、中盤まで非常にテンポが良くサックリと見ることが出来た。また兄弟と旦那、娘と母の対話場面は長回しによって「対話の成り立たなさ・相手を説得することの不可能性」が強調されていたように思う。一方で妻に話が切り替わってからはエンディングまで多少長く感じたが、妻の最後に見せる僅かな微笑みは復讐を成し遂げた、または、漸く落ち着けたようにも取れ、言語化しようもない感情が絶妙に表現されていたと思う。今作の見所は村兄弟の存在。出てきただけでなんとも不吉な雰囲気を醸し出すキャラクターは久々で「ヤバい奴は人の車のガラスをブン殴るというのは世界共通なのか…」と新たな発見もあった。そして犬が余りにも普通にただの犬過ぎる。賢いワンちゃんなどファンタジーとでも言わんばかりの役に立たなさを賞賛したい。
酸基

酸基