無差別イイネは咒殺

REVOLUTION+1の無差別イイネは咒殺のレビュー・感想・評価

REVOLUTION+1(2022年製作の映画)
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紙袋を抱えた家族や、何処かへ出かけるカップルを横目に見ながら、会社休んで『REVOLUTION+1』を公開初日に見た。
場内は超満員の中、右翼と左翼と公安警察が一触即発・・・なんて事態を期待しながら行ったのだが、そんな渡辺文樹の興行みたいな事は起きなかった。
確実に「今」見るべき映画である。

内容は、ぶっちゃけ、安くて古く感じてしまった。
前半は舞台のような独白が多く、屋内のシーン中心で映像も予算の限界を感じるので、正直テレビの再現ドラマのように感じた。
しかし後半は屋外のシーンが多くなるのだが、そこは逆に安さが生々しさを生んで見応えがあった。
大友良英のテーマ曲も良い。

この映画に関しては、今この瞬間に見ないと意味がない。
正直、事件の詳細が分かっていないので、創作だったり曖昧な部分がある。
もっとしっかり作られた本や映画が今後出る。
しかし事件があった年にこのスピード感で公開されるというのがポイントだと思う。
そういう意味で、気になる人は今見るべき。

山上容疑者を英雄と描くか否かが気になっている人も多いと思う。本編では英雄的に描かれるまで行かなくとも、殺人という行為の是非を問う訳でもなかった。
これは英雄視というよりも、タクシードライバーやキングオブコメディ、ジョーカー、丑三つの村と同じ視点なんじゃないかと思う。あとファイトクラブもか。
これらの作品では、殺人という行為は本来やってはいけない事という前提がある上で、その行為を咎める視点がないのが特徴である。だからこそ作品としては危うく光る。
俺は多分そういう前提があるんじゃないかと思うが、英雄視していると言われても仕方ないかもしれない。

事件については不勉強なのだが、映画について言うと主人公「川上」は父と兄の自殺、母のカルトへの傾倒で心に深い傷を負った。「人と人で構成された社会というシステムで生きていく上で必要な“自信”のようなもの(言語化難しい)」を早々に失い、きっと全てが上手くいかなくなったのではないかと思う。

ここまで悲劇が重ならずとも、こういう人は沢山いる。
普通に社会生活を過ごしている中ではあまり出会わないかもしれないが、些細に感じるような出来事でもそれで挫けてしまって、社会と上手く関われなくなってしまう人が沢山いる。俺もそうだった。弟もそうだった。友人にも真っ只中の人がいる。

「恒星は何億年と自ら輝き続ける。俺は星になる」みたいなセリフがあった。
テーマ曲が重なり、印象的だった。
このセリフが本人のツイートなどに残されていたのかは分からない。でも一定の人間がこう思っているのも事実だ。俺はいつか何かを成し遂げる。それが凶行へと結びつくことになってしまった。

個人的にグッときたシーンは、掃除をする母親を箒を取り上げ、自分が掃除をするシーン。仲睦まじく交わされる会話。それは川上の刹那の想像だった、というシーン。直後凶行へと向かう姿のある意味安っぽい画面が逆にリアルで、悲しくなってしまった。
孤独を感じてる人ほど見に行ってみては。以上。