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秋日和 ニューデジタルリマスターのtomひでのレビュー・感想・評価

4.0
東京国際映画祭2023の小津安二郎特集上映で「秋日和 デジタル修復版」を鑑賞。「秋日和」を観るのは3回目。劇場では初めて観る。

本編が始まる前に10分位のヴィムベンダースの小津安二郎についてのインタビュー映像があった。ヴェンダースが学生時代、フランスでは溝口、黒澤、大島の作品は観る事が出来たのに小津作品は観る事が出来なかった事。それは当時日本の配給会社があまりに日本的な小津作品は海外ではウケないと自主規制してフィルムを出さなかったらしい。その極めて日本的な小津作品が真の国際映画となり得た事実をヴェンダースは熱く語っていた。

久しぶりに本編を観たが、やはり小津独自の画づくりがとても面白い。日本家屋の畳のラインや襖のライン、窓枠のライン、障子のライン、机のライン、画面の中に引かれる様々な線、縦横そして手前から奥、奥行きがある筈なのにとても平面的に捉えるカメラの面白さ。リマスタリングされた画なので小津が意識して入れた画面の中の様々な線を更に注視して見る事ができる。小津独自のフレーミングが本当に面白い。

そのフレームの外から、または画面内の線(襖)から人物が出入りする間合い、ショットの構成も、良い悪いを越えて小津独自のものでしかなく見ていて楽しくなる。伊香保温泉、榛名山の情景ショット、手前になめている窓枠と提灯(2つとも作り物)のフレーミングなんかも独自過ぎて面白い。

「秋日和」は結婚適齢期を迎えた娘とその母親(未亡人)、両方の結婚相手をお節介にも紹介しようとする話。出てくる登場人物全員が節度があって良い人。感情が沸き立って怒る時も泣く時もその節度が守られる。今の日本人には無くなってしまった美しさがある。

百合子を演じた岡田茉莉子、めちゃくちゃ綺麗だった。

上映終了後には満員の劇場から拍手がおこり、あぁ今この空間には小津安二郎が好きな人が沢山集まっているんだなとちょっと嬉しい気持ちになった。生誕120年没後60年小津安二郎の企画をしてくれた東京国際映画祭2023に感謝。終電ギリの上映終了にちょっと焦った(笑)
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