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ライフのbackpackerのレビュー・感想・評価

ライフ(2022年製作の映画)
3.0
第35回東京国際映画祭 鑑賞16作『ライフ』

171分という長~い上映時間のうえに、見る者を困惑させる展開が連続する内容に気をやりそうになる、超ビジュアル映画。
絢爛豪華から殺風景まで、画力のあるショットが連続する、まさに"驚異的な映像"体験です。監督のエミール・バイガジンによる撮影ということでしたが、原案・脚本・プロデュース・編集もこなしているので、なんと一人で6つも担当(脚本や編集には他のスタッフも入っています)していたことにも驚きました。

内容を簡単に言えば、魂の放浪劇とでも言いましょうか。人勢のどん底に落ちた主人公が、たった一つのよすがに縋りつつ、何とか状況を変えようともがき彷徨う話です。
本作の面白い点は、主人公アルマンの放浪の旅路が、現実か虚構かわからないところにあります。というのも、彼の旅は本当に脈絡なく展開するうえに、絶体絶命の窮地に立たされて(または命を落としたような描写で)次のシークエンスへと移行していくため、「これは夢ではないか」と思わざるを得ないためです。
かような演出で進むうえでは、鑑賞者を置いていかないように、引き付け続けるための工夫が必要になりますが、本作では驚異の映像がその役割を担っています。それが良いか悪いか。判断が難しいところですね。個人の主観で変わりますし。要するに、虚実入り混じった自己探求ロードムービーである本作は、鑑賞者の適正や資質を問われる作品だったと思います。

個人的には、監督の個性を前面に出した本作は、アート色強めの非凡なビジュアルを連続させ、ストーリーは二の次にも見えるものでしたので、正直苦手な部類ではありました。
基本私は、午後ロード系ハイコンセプト畑作品育ちのため、ミニシアター系の作品も好んではいますが、やはり育ちは出てくるもの。本作のようにユニークな映画には、いまいちついていけません。繰り返し見たいと思えるほどの魅力も感じず、かなりの時間睡魔と戦う程度にはつまらなく感じてしまっていたこともあり、レビューをする資格もあるのか疑問で……。
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