儚げな佇まいだが肉食系な主人公フリアンの苦悩と罪をじっくり描くヒューマンドラマ。
前作『マジカル・ガール』のような突飛さは無いが、"見せない演出" は健在。
特定人物がアップになると、画面外の音だけで何か良からぬ事が進行する不安を煽られた。
VRゴーグルをして創作するシーンだけを映して、完成物を見せないのも内容的にかなり効いている気がする。
お話としては、隣室の火事から少年を救った事で主人公の内面で "何か" が変わってしまい…という物。
その "何か" でとある事に及ぼうとするシーンで「虎の絵」が映った瞬間は、ショッキングなシチュエーションも相まって鳥肌が立った。。
…まさに『怪物(マンティコア)』。
あと、主人公がその都度一人の相手としか親睦を深められず、新しい人間関係ができると以前の相手に目もくれなくなる様も妙なリアリティがあって何だか居た堪れなかった。
親睦を深めていく事になる女性ディアもミステリアスと言われればそれまでだが、不自然な描かれ方があり何か裏の意図があるようにも思えた。
全体的にスローペースなのは否めないが、色んな視点から歪んだ愛情を観測できる作品。
パンフレット表紙になっている真っ青なマンティコアの絵も好き。