矢野竜子

マンティコア 怪物の矢野竜子のネタバレレビュー・内容・結末

マンティコア 怪物(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

クローネンバーグ系かと思っていると
手痛いしっぺ返しを食う
びっくりするほどの正統派映画。
他人と自分の世界の間にひかれた
境界性にまつわる物語であり、
その境界を超えたものに訪れる罰。
ものを生み出すことは
他人と自分の境界性を超えることであるし
セックスもその境界性を超えることである。
扉や窓こそがその境界を象徴し、
男は常に侵入者(部外者)となる。
自分の家にいるはずなのに
窓から女が寝る部屋に入る
異常なシチュエーションがその筆頭か。
扉のない「侵入」こそが
VRゴーグルを用いたある「罪」。
誰も傷つけていないと男は語るが
それは間違いなく「侵入」であり、
他人によって描かれた異形の自分自身の
輪郭を見たことによって
男は自らを罰することを選択する。
その最終的な結果、男は身動きを
一切とることができなくなり
他人から「侵入」されざる
を得ない存在となる。
それはこの男にとって
一種のハッピーエンドかもしれない。