このレビューはネタバレを含みます
クローネンバーグ系かと思っていると
手痛いしっぺ返しを食う
びっくりするほどの正統派映画。
他人と自分の世界の間にひかれた
境界性にまつわる物語であり、
その境界を超えたものに訪れる罰。
ものを生み出すことは
他人と自分の境界性を超えることであるし
セックスもその境界性を超えることである。
扉や窓こそがその境界を象徴し、
男は常に侵入者(部外者)となる。
自分の家にいるはずなのに
窓から女が寝る部屋に入る
異常なシチュエーションがその筆頭か。
扉のない「侵入」こそが
VRゴーグルを用いたある「罪」。
誰も傷つけていないと男は語るが
それは間違いなく「侵入」であり、
他人によって描かれた異形の自分自身の
輪郭を見たことによって
男は自らを罰することを選択する。
その最終的な結果、男は身動きを
一切とることができなくなり
他人から「侵入」されざる
を得ない存在となる。
それはこの男にとって
一種のハッピーエンドかもしれない。