木蘭

マンティコア 怪物の木蘭のレビュー・感想・評価

マンティコア 怪物(2022年製作の映画)
1.4
 自身に獣性(パラフィリア:性嗜好異常)を抱える者たちの話。

 初めはゲームや漫画と言った直接的な被害者の存在しないメディアを用いたインモラルな行為に付いての話かと思ったら違った。
 途中から捉え所の無いラブストーリーがダラダラ~っと展開し、後半で事態が急展開したかと思ったら二転三転し・・・ええっという着地点に。

 ハッキリ言って胸くそ悪いだけで、中身は無い。

 パラフィリアを抱える人々を描きつつ、問題提起を監督はしたらしいが、提起しただけで独自の視点や提言は何も無い。
 つまりプロットの為の素材でしかなく、深く掘り下げる事も無いし、切実な問題として誠実に向き合う事もしていない。

 象徴的なのは、主人公が全くもって同性小児愛者に見えない所。
 確かに伏線を沢山盛り込んではいる・・・女性との性交が上手くいかない、今まで彼女が出来た事がない、少年みたいな女の子に恋をする、初めてのベッドインでお尻ばっかり舐めている(女性器ではなく肛門をという事なんだろう)等々・・でもそれは極めて作為的で記号的。
 少年のアバターを使ってマスターベーションをするという行為も、一寸"オカズ"の趣向を変えてみたなんて事は良くある事だし、その後に少年を避けるのも、自身の獣性を恐れたというより、真面目だから罪悪感で辛くなった様にしか見えない。

 兎に角、全てが記号的で浅く、リアリティが感じられない。
 クライマックスだって・・・おいおい、追い詰められたって、そんな事しないだろ・・・と不快感しか無い。

 ラストでの周りの人々の反応の変化や対応(即、逮捕案件なんだが)もなんだそりゃ?だし、ヒロインの明らかになるパラフィリアとやらも蛇足。
 ってか監督がパラフィリアって言っているだけで、この描写でどこがパラフィリアなんだ?と言いたい。愛情とやりがいを感じながら介護している人間をバカにしているのか?としか思えない。

 欧米人にとっては同性小児愛者なんて、最も嫌悪感を感じる存在だから作為的な記号を並べたプロットでも充分なのかも知れないが・・・監督が影響を受けたらしい往年のホラー映画や日本のサブカルは、もっとグロテスクで生々しく、時に誠実で豊かな物語として、この問題を描いているよ。
木蘭

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