Fuku

父は憶えているのFukuのネタバレレビュー・内容・結末

父は憶えている(2022年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

      あらすじ
 木立が白いペンキに塗られた様子のドリーショットから始まる本作は、大変ドキュメンタリー色の強い演劇作品だった。キルギスの社会問題であろう貧困、ゴミの不法投棄、男尊女卑、上流階級のための政治が一つの家族とその友人の視点から生々しく映し出された。
主人公と思われる男はロシアへ出稼ぎ入っている間に、事故の影響で記憶喪失、失語症を患った。家族から死んだと思われる中、息子が男を故郷に連れ戻すことで、止まっていた時計の針が動き始める。
男の息子は二人の子を生み、妻は再婚していた。村中が彼の到着を聞きつけるものの、男は何も覚えていないため、みんなを失望させてしまう。それだけでなく、男は患った身のせいで多くの迷惑をかける。
みんな、男に対する理想と現実の溝に苦しみながらも、なんとか今までのように生きていこうとする。そんな中、元妻はムスリム教徒や世間から見た自分の立場に苦しみながら再婚相手と自分から離婚することを決意して、その旨を伝えた。はなから彼女に対して興味がなく母親から言われたという理由で結婚した彼は世間体や自分のプライドを傷つけられ、レイプしてしまう。その後彼女は男の家に駆けつける。家の中は男の息子家族のみならずその友達もおり、とても気まずい雰囲気になる一方だったが、突然彼女は歌い出す。その歌は木立の下半分にペンキを塗っている男に届き、何かを思い出したかのように、画面の我々に背を向け、動き始めたところで本作は終わった。

     思ったこと
 失語症の男が行動でゴミの不法投棄を解決している様子は、普段われわれが無意識のうちに社会問題を無視していることを強烈に批判していた。
中央アジアの山々の優雅さ、乾燥した気候の中でも川の恩恵を受けた木々の豊かさをから来る中央アジア的自然に圧倒される。家の作りは自然との接続が感じられつつも、現代の波に逆らえず、外国製と思われる家具や電子機器が散見された。ワンシーンワンカットを思わせるくらい、ワンカットが長く、一つのカットにたくさんの情報が詰められていた。少しタルコフスキーに近い情緒が感じられた作品だった。
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