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父は憶えているの440のレビュー・感想・評価

父は憶えている(2022年製作の映画)
4.5
23年前にロシアで消息不明となった父が過去の記憶がない状態で戻ってくる。

キルギスの田舎町を舞台にした家族の物語。

記憶のない父
接し方が分からない家族
亡くなったと思い、街の権力者と再婚してしまった母

ゆったりとした街で淡々と描かれていく作品なのですが、過去の出来事や登場人物の心情など映画で描かれていない部分の苦労や葛藤を考えただけで胸が熱くなっちゃって泣いた。

キルギスという土地がどんな場所なのか知識は全くありませんでしたが、日本人に近い顔立ちでとても親近感がある。
でも平然とされる飲酒運転やゴミのポイ捨てなど日本人なら嫌悪感を抱くシーンもあるので注意は必要。
日本の当たり前は別の国では通用しない事を改めて痛感。

戻ってきてから一言もしゃべらない父
黙々と汚れた街を清掃する父

なんとか父親に自分達の事を思い出してもらおうと息子や母親、友人たちが一生懸命努力する姿に感情移入するが、話の核になる「なぜ23年前にロシアにいたのか」や「ロシアで何が起こったのか」は全く描かれないため、鑑賞していてモヤモヤがずっと心にある状態でした。

しかし後半、直接説明はされませんが「父親の行動が過去の思い出を取り戻そうとしている」という事が分かる。
父の頑張っている姿を見ていたら何が起こったのかはどうでも良くなり「今」を必死に生き、「過去」の抜け落ちた時間を取り戻そうとする必死さを感じ、また涙。

クライマックスの歌は心に刺さる名場面だと思いました。

それにしてもやたらいろんな種類のパンを食べたり人に薦めてたなぁ。
無料洗車機はこの作品の見所の1つです。
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