ゆうき

第三次世界大戦のゆうきのレビュー・感想・評価

第三次世界大戦(2022年製作の映画)
3.0
紹介文のあらすじを読む限り、鑑賞前は「どうしてこんなタイトルなのだろう?」と、不思議に思ってました。そして、鑑賞後は「やっぱりよく分からん…」という感じです(笑)

この作品では、主人公がイラン人の日雇労働者という設定で、ある日、映画撮影の現場作業員として働く事になります。そこから、ふとしたきっかけで急にヒトラー役に抜擢され、主人公の周辺にある様々なドラマが動き出す、というストーリー。このような設定にも、世界大戦という暗喩があるわけですね。

さて、本作のストーリーを総じて言えば悲劇と表現する事ができるのですが、その仕組みが上記のような「偶然」で構成されており、それ自体には特段意味がない。なので、結末として行き着く主人公の激情の背景が、ひたすら感情的・直情的であって、特筆すべき思想的・個人的な背景はありません。

一方で、第二次大戦は、植民地支配の行き着く先にあったブロック経済による政治的・経済的な悲劇であり、またヒトラーの存在も思想的なものであるわけですから、「個人的な激情」で戦争が生じるわけではない、というのがアカデミック(むしろ一般的)な見解なわけです。

ここら辺の関連の弱さも、どうしてこのタイトル?という疑問を深めるし、何故にヒトラーをキャラクターとして登場させたのかも曖昧なまま。そもそも、本作の悲劇からどのような教訓を学べばいいのかも分かりませんでした。

と言うように、かなり辛口になってしまいましたが、構成や脚本、演出などがしっかりしているので、集中して映画を観ることは出来ます。それ故に、中身が薄いのが際立ってしまった、という感じか。

結末が悲惨という意味では、本作(第三次世界大戦)も第二次世界大戦も同じなのですが、その背景も要因も全く関連が見出だせなかったため、特に学びはなかったか…という感じと共に、「戦争」と「個人的な激情(復讐)」は、全く別物だとしか言えない。

つまるところ、衝撃的な結末を用意すれば、悲劇として名作になるわけでもない、という事に尽きると思います。
ゆうき

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