ハル

こんにちは、母さんのハルのレビュー・感想・評価

こんにちは、母さん(2023年製作の映画)
3.8
山田洋次ならではの作風。
昭和感に馴染むかどうかが全ての“古臭くもあったかい肌触り”
今でもこんな家族の姿はみられるのかな?
僕の目には形を変えた大人の群像劇に映った。

奥さんとの離婚問題、会社での立ち位置に葛藤を抱えた昭夫(大泉洋)は実家を久々に訪ねてみる。
そこには年齢を重ね、できない事が増えてきたお母さん(吉永小百合)が一人。
人生の岐路、ふとした縁により、実家に立ち入るようになった昭夫。
お母さんと娘、縁遠くなった幼なじみと親交を深めながら、自分探しをしていく心の旅路。
また、その過程でお母さんに新たな恋の予感も。

やっぱ好きだな〜この優しい質感。
時代遅れかもしれないし、実際にここへ放り込まれたら自分は数日で帰ってしまうかもだけど、“リアルな時間と空間”を大切にするというホッコリテイストに癒やされる。
ネットやSNSではなく目の前にいる家族
を見つめる時間、本当に大切ものがなにかをわからせてくれたんだ。
いくつになっても親にとって子供は子供なんだよね…
一番沁みるポイントはここ。
福江にとっての昭夫、昭夫にとっての舞(永野芽郁)
澄み切った親子愛に憧れてしまう。

「母さんの出番だね!」「落ち込んでいる場合じゃないよ!」など、言葉をはっきり言い切る所や江戸っ子長なセリフの言い回しはやや重たい…しかし、居心地の良さで包んでくれる。
ラストシーンの花火も文句なしの美しさ。一つの方向性が見えた物語の締めとして華やかで良き。
昔のスペシャルドラマのテイストが好きな方なら楽しめると思います。

役者陣についても少々。
吉永小百合も大泉洋も流石にベテランの技、巧みなお芝居。
ただ、今作で最も印象に残ったのは永野芽郁。
ハキハキした元気娘は親と子の潤滑油として八面六臂の大活躍。
彼女は透明感と愛らしさが図抜けている。
女優としては初の日本武道館でのイベントも控えているらしく、まさに乗りに乗ってる旬な存在。
輝かしい勢いそのままに、スクリーン内でも躍動していた。
また、加藤ローサを久々に見たが、昔と変わらぬ美貌…女優さんは細胞が年を取らないのだろうか。

山田洋次監督のネームバリューがなければ、この作風にビッグネームを揃えることは不可能だったはず。
そうした観点から見るとオンリーワンなオリジナル性を含んだ劇映画だと思う。
情で結ばれた様々な関係性を懐かしみ、思いを馳せたい時に浸りながら鑑賞できるレアな作品。
レトロな下町映画の帰り道、月島あたりでもんじゃを食べたくなりますね。
ハル

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