ほどぼち

こんにちは、母さんのほどぼちのネタバレレビュー・内容・結末

こんにちは、母さん(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

心がふっとゆるむ、そんな映画でした。

大会社の人事部長として、神経をすり減らす日々を送る昭夫(大泉洋)。そんなとき、実家のご近所さんのお煎餅を食べて、一言。
「お煎餅は、人の心をなぐさめるためにあるんだなぁ。俺もこういうものをつくる仕事を選べばよかった。こういうものは、裏切らないから……」そういって涙を流す昭夫に、わたしも思わず感情移入してしまいました。

家では妻との離婚問題、大学生になった娘・舞(永野芽郁)との関係に頭を悩ませるなど、公私ともに問題山積の日々。

「話しても、どうにもなんないから!」
はじめのころ、昭夫は、母に対して何度もこう突き放します。

けれども、お節介がすぎるほどに温かい下町の住民や、これまでとは違う母との触れ合いを通じ、昭夫は、すこしずつ自分のことを話し始めます。

思いもよらず共感を得たり、自分の気持ちをただぶつけたりするなかで、昭夫のこころは、すこしずつ人間らしさを取り戻すのです。

まさに言語化が、強張ったこころを、ほぐしていったのでしょう。

「もう疲れちゃいました。
 この仕事は私には合わなかったのだと思います」

そう胸をはって、堂々と言い切った昭夫の、憑き物がとれたような表情に、わたしまでホッとした気持ちになりました。

昭夫とおなじように、がんじがらめで身動きがとれず、どうしようもない生活に、疲れ切っている人は多いんじゃないかなぁ。
わたしもそんな一人です。
そんな等身大の生活を、山田洋次監督が、人情味であたたかく包んでくれたような、そんなほっこりする映画でした。
ほどぼち

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