山田洋次の脳内にしかない理想の下町で今日も今日とて人情あふれる住民と幸せに暮らす吉永小百合。
これは和製「バービー」です。
「母べえ」「母と暮らせば」に続く母3部作の最終作ですが僕は全作劇場で見ているのでサユリストと名乗っても良いかと思います。
山田洋次と大泉洋の食い合わせが思いのほか良くてこのコンビでもっと作品が見てみたいですね。
北野武が山田洋次の描く下町は山田洋次がこうあって欲しいと憧れている存在しない東京だ。みたいなことを言っていたの記憶があります。
人情深くおせっかい焼きの住人たちと一体いつの時代かわからない町で変わらない日常を送り外の世界を見ない小百合がバービーランド暮らすバービーと重なります。
「バービー」と違うところは小百合は決してサユリランドから出てはいかず、現実世界に嫌気をさした人々がサユリランドにやってきて癒やされるのです。
そしてみんながみんなサユリランドの素晴らしさに感化されていきます。
逆にサユリランドを良しとはしない大泉洋の妻は顔すら映してもらえません。
そんな小百合にも転機が訪れ、妻という属性でも母という属性でもなくなり女として生きようとしても頓挫します。
これ海外映画だったら周囲に付与された属性から解放され自由になったというポジティブな展開になりそうですが、小百合は途方に暮れ生きる意欲を無くし酒に溺れます。
そしてもう一度母として生きることができるとわかった瞬間生きる意欲を取り戻します。
もうこういうところが完全に日本的という感じですね。
「バービー」の真逆の作品として同日に鑑賞して良かった作品でした。