Moriuchi

こんにちは、母さんのMoriuchiのネタバレレビュー・内容・結末

こんにちは、母さん(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

GEOでレンタルして鑑賞しました。
一言でいえば、
「さすが山田洋次」
です。

本作で大泉洋が演じた「大企業の人事部の上の方のポジション」と似たような立ち位置の親友が僕にはいて、その彼から「大企業の(人事の)ロジック」みたいな話はよく聴くんです。たいへんだなぁ、って思います。生き馬の目を抜く世界。実に世知辛い。
でも、その彼は、
「ふたつ選択肢があるとしたら、こころが温かくなりそうな方を選ぶことにしてるんだ」
と言っています。正しいか間違っているかではなく、得するか損するかでもなく、楽しいか苦しいかでもなく、こころが温かくなりそうかどうかを(何かを判断する時の)基準にしているんだ、と。
(口先の美辞麗句ではなく)彼は本当にその言葉通りの、めっちゃ温かい人で、実際にそういう在り方を徹底しているんですよね。だから尊敬できるんです。
本作における大泉洋も、大きな組織の中で「温かくなりそうな道」を懸命に探していました。

吉永小百合や寺尾聰が行っていた(家を持たない人たちへの)ボランティア活動も温かい。どうにかしてこの世界を温かく(優しく)変えられないかという思いの元に彼らは行動していました。

そして、吉永小百合が演じてみせた高齢者の恋。
凄くいいと思います。
愛情なんてとっくに失っているのにひとつ屋根の下で暮らす「形式だけの夫婦」はこの世にごまんといる。一度きりの人生の後半戦を「愛してない人」と一緒に暮らすなんて僕には悪夢としか思えないけれど(どんだけ絶望的な罰ゲームやねん。それなら断然独りがいい)、何かが理由で「そうせざるを得ない」ということなのでしょうか……。

政権与党に属する国会議員たちがこぞって裏金作りに没頭している一方で、「温かい世界」を作ろうと頑張っている一般人もたくさんいる。
山田洋次監督は一般人ではなく、セレブリティの極致をゆく大監督だけど、一貫して「温かい世界観」を自作に投影し続け、「寅さん」がまさにそうだけど、恋を描き続けている(本作の中で、大泉洋が寅さんに見えるシーンがいくつかあった。たまりません)。
本当に凄い映画監督、偉大な人だと思います。山田洋次監督には長生きしてもらって、もっともっと映画を作ってほしいです。
Moriuchi

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