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春に散るのMrOwlのレビュー・感想・評価

春に散る(2023年製作の映画)
4.3
一言でいうと「最高」の作品でした。熱くなりましたし、泣きました。本作は沢木耕太郎さん原作「春に散る」の映画化作品です。沢木耕太郎さんはノンフィクション作品の「深夜特急」が有名ですので名前を知っている人も多いでしょう。主演は佐藤浩市さんと横浜流星さん。共演に橋本環奈、片岡鶴太郎、哀川翔、窪田正孝、山口智子さんなどが名を連ねます。
脚本、演出面では、アントワン・フークア監督の「サウスポー」(ジェイク・ギレンホール、フォレスト・ウィテカー)を意識しているのかな、と感じました。原作と多少異なる登場人物の立ち位置は「サウスポー」に近い感じですね。サウスポーはカメレオン俳優と呼ばれるジェイク・ギレンホールが、ボクサーにしか見えない動き、実際のラスベガスのボクシングリング、本当の試合でも実況しているアナウンサーなどが出演しており、試合のリアリティが高く素晴らしい作品でしたが、本作も横浜流星さんがプロ試験に合格するなど、役作りが見事です。共演の片岡鶴太郎さんは、プロボクサーのライセンスを持っています。さらに、鬼塚勝也や畑山隆則のマネージャーとして、タイトルマッチではセコンドを務めるなど、両人の世界王座奪取に大きく貢献しています。ヨガもやっているということで体型は細身で昔ボクサーだったことや、シャドーをするシーンに説得力があります。佐藤浩市さんも、トレーニングしたんでしょうか、横浜流星さんとのクロスカウンター、ミット打ちなどトレーナーとしての動きが凄いです。ちなみに、途中で出てくるチビッコ達が楽しそうにしているジムでトレーナーをしている人は「松浦慎一郎」さんという俳優さんで、ワタナベボクシングジムでトレーナーをしていた経験があり、耳が聞こえない元プロボクサー・小笠原恵子の自伝『負けないで!』を原案にした「ケイコ 目を澄ませて」でもボクシング指導とトレーナーとしても出演しています。この作品も、サウスポーも、本作もそうなのですが、ボクシングのリアリティが高い映画は、説得力と没入感が強くなりますね。良い作品の条件の一つと言っても良いかもしれません。横浜流星さん、対戦相手の窪田正孝さん、坂東龍汰さん、まさにボクサーでした。演技では横浜流星さんがやはり素晴らしいですね。熱意を表現する時の表情は、こちらの胸に響いてきます。一方で動揺や哀しみを表現する時の目線、表情も素晴らしい。セリフがなくても、動揺している、哀しんでいる、ショックを受けている、様々な心の動きがヒシヒシと伝わってきます。なので、泣かされます(笑)。ボクシングを通じて、人生と格闘している登場人物それぞれの人生を感じられる作品でした。観てよかった。リピートする人も多いのも納得です。
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