れおん

春に散るのれおんのレビュー・感想・評価

春に散る(2023年製作の映画)
3.5
「あんたのボクシングを教えて欲しい」飲み屋で思いがけない出会いを果たした黒木翔吾。ボクシングに失意の念を抱き、ボクサーとしての淵にいた彼が、飲み屋で出会ったのは伝説のボクサー・広岡仁一。不意の出来事により、広岡の拳を交わした黒木はその衝撃に再び立ち上がることの決意を固める。今しかない選択を、一瞬だけを生きると決めた黒木。広岡と歩む頂点への道、人生を賭け、挑む世界戦...

瀬々敬久監督の「映画」に対する感性が嫌いだ。観客が求めていそうな演出を、観客はこれで感動するんでしょ?っていう物語を、優秀な役者を使い、綺麗な映像と音楽とで「感動」を生む。やっぱり好きになれない、こういう映画。「感動」はする。実際、涙ちょちょ切れだったし。『糸』『ラーゲリ』と「感動」ヒット作を撮り、たまに『最低。』『友罪』とか絶妙に素晴らしい変態作品を撮る。

全体的に薄っぺらい。面白みがない。とりわけキャラクターの深堀が足りない。本当に人生崖っぷちなのか?そのキャラクターの過去にあった"情報"だけを台詞で伝えるのではなく、現在の状態からどういった過去だったのかを観客が想起できるような重みのあるキャラクターの表情・行動が欲しい。言葉じゃなくて、表現で。

邦画ボクシング映画といえば、『あゝ、荒野』。超えられるわけがない。黒木翔吾、何がどん底だ。この作品を観た後、『あゝ、荒野』を思わず見返した。溢れんばかりの涙が、胸の苦しみが、襲いかかってきた。『百円の恋』も素晴らしい...

あなたはどちらのボクシング映画が好みですか?
どちらの"痛み"が真の"痛み"ですか?
れおん

れおん