枯れた連中・後がない面々・刹那主義ー。文芸作品的コーティングが施されているけれども本質はありきたりなスポ根ドラマの都合の良いつまみ食い。年寄り目線の責任回避型スポ根ドラマで、“美味しい部分”が一つもないから手に負えない。
主役にメタ発言させるくらい作り手に自覚がある時代錯誤な本作のテーマは、人間の生き様を見せつけ、観客を動揺させれば映画として勝ちだと思うので一向に構わないのだが、いかんせん画的にも展開的にも説得力がないのだ。
まずもって佐藤浩市が元ボクサーの役に見えない。重い病気を抱えている中でも隠せない格闘家特有の殺気というものが全く出せていない。
現役選手たちもそう。格闘家ならではの威圧感がないし、横浜、窪田、坂東はきれいすぎて困る。役作りとして筋肉を増やし、俊敏な動きを身につけられても鬼気迫るような雰囲気はそう簡単に出せるものではないことを教えてくれる。
激しく打ち合い、グロいくらい顔がボコボコに腫れ上がる試合シーンの映像表現は褒めるが、どこかで観たようなものを希釈した感じのストーリーも相まって、試合に臨む姿勢だけで大衆に共感されるクライマックスの流れは取ってつけた感じが拭えなかった。
舞台設定と映し出される風景の不揃いも雑な作りとの印象を与える。
それで我らが橋本環奈。メイクによるところもあるものの明るいオーラを全て消し去り、ここまでやつれた雰囲気を出してくるのはさすが。シリアスによくハマることを今回も証明している。