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エリザベート 1878のニックのレビュー・感想・評価

エリザベート 1878(2022年製作の映画)
4.8
おとぎ話のお姫様は、魔法で重力を奪われた。彼女は水の中でだけ、重さをとり戻すという。

真夜中に従兄弟の城の湖で泳ぐ。
自分より弱い彼から心配されて、
「いいえ海の方が好き」と言う。

象徴で有り続けるのは大変だ。

いや、それは皇妃でなくとも。
若い頃はやってのけていた"周囲の期待通り"の演技が、歳を重ねるごとに難しくなってくる。これは我々に共通の、時代を超えた苦しみである。

昔は私も、自分だけは年を取らないと思っていた。いや、もちろん頭では分かっているつもりだった。しかし実際、それがどういうことなのか、時が重なる蓄積とはどういうものなのか、ぜんぜん解っていなかった。

コルセットの中に閉じ込められた彼女を、フィクションにせよ解き放ってあげた功績は大きい。泣きながら拍手。
そんな気持ちだ。

主演のヴィッキー・クリープスがなにせ素晴らしかった。