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クロティルダの子孫たち -最後の奴隷船を探して-のhasisiのレビュー・感想・評価

3.5
現代の米国。南部に位置するアラバマ州。アフリカタウンに暮らす人々が町の歴史を紐解き、奴隷の密売と、水質汚染について語った記録。
モービル川で最後の奴隷船、クロティルダ号の残骸が発見されたのは2019年のことだった。

監督は、マーガレット・ブラウン。
2022年にNetflixで配信されたドキュメンタリー映画です。

※解説文を掲載していますが、本編がこれらを理解している前提で進むので、ネタバレでは無いと判断しました。
ただ、最後の[交流へ]のくだりに、落ちに関わる感想を掲載しているので、これから観る予定の方は、そこだけは飛ばした方がいいかもしれません。⚠️

【映画にまつわる歴史のお勉強】🏙️📖🖊️
ブラウン監督は、アラバマ出身の女性で生年月日分からず。
代表作は『メキシコ湾原油流出事故の真実』

[奴隷制]🤌🏻💵👨🏿‍🦱👩🏿👌🏻
人格を否認されて、他者に所有される人間が存在する社会制度。
北アメリカ大陸では、イギリスがバージニア植民地に入植した直後、1607年には始まっている。

[奴隷の密売]🌎⛵🌍
奴隷輸入禁止法が施行されたのが1808年。
アフリカから新たな奴隷を連れて来ることが禁止された。
この時点では、奴隷制そのものは継続されている。

1850年代から1860年代初頭までニューヨーク(移民の玄関口)を中心に、奴隷の密売が確認されている。
工業化が進んでいった北部と違って、南部は、ヨーロッパへの綿花の輸出を中心とした大規模農業が中心だったので、新たな労働力の確保に需要があった。

[クロティルダ]🔥⛵
アフリカから米国に奴隷を運んだ最後の奴隷船と言われている。
全長26メートルで、幅7メートルの木造船。
奴隷として運ばれたのは100人以上。
1860年にアラバマ州のモービル湾に到着した。
到着後は、証拠隠滅のためにモービル湾で燃やされ、自沈している。

[ティモシー・ミーアー]💰🙎🏼‍♂️
1812年—1892年。
アイルランド系アメリカ人の男性。
人身売買業者で、実業家で、地主。
クロティルダの所有者であり、奴隷密輸の責任者。

アラバマ州にはミーアー州立公園。アフリカタウンにはミーアー通りがあるなど、著名な大地主だった。

[南北戦争]🪖💥🔫
1861年から1865年。
北部のアメリカ合衆国と、南部のアメリカ連合軍が戦った内戦。
共和党議員であり、のちに「奴隷解放の父」と呼ばれるエイブラハム・リンカーンが大統領に就任したのが切っ掛け。
奴隷制存続を主張する南部の11州と、合衆国を維持した北部23州との戦い。

1865年に北軍が勝利し、同年のアメリカ合衆国憲法修正第13条によって、公式に奴隷制が廃止された。

[アフリカタウン]🏚️🏪⛽
アラバマ州、モービルのダウンタウンから北へ5キロの位置あるコミュニティ。
クロティルダで輸送された西アフリカ人、30以上を含むグループによって形成された。
1950年までアフリカの習慣と言語を維持していた。

20世紀には製紙工場の操業によって12000人が暮らしていたが、21世紀初頭には2000人にまで減少している。
崩れかけの空き家が多く残り、商店やガソリンスタンドも壊滅している。

2012年には、歴史地区が国家歴史登録財(NRHP)に。
本編では、博物館を建て、観光名所として町を復活させたい思惑も収録されている。
監督が強く後押しているのが編集で分かる。

[インターナショナル・ペーパー]🏖️🏭
世界最大の紙パルプ会社。

アフリカタウンは、水路沿いに面している立地の良さから、20世紀初頭には製粉所、製材所などが進出。
1928年にミーアー家の土地にも製紙工場が建てられ、数10年に渡って稼動している。
最盛期には3社の製紙工場がひしめき、町の産業はうるおっていた。

それに伴い、深刻な産業公害と公衆衛生上の問題が発生し、住民に高いガンの発生率を引き起こしている。

2010年には工場が閉鎖。2017年には1200人の住人グループが、インターナショナル・ペーパーに対して訴訟を起こしている。

[交流へ]🤝🏼
船長の子孫と地元民の交流。
奴隷を連れてくる仕事をしていた人の子孫と、奴隷として連れて来られた人の子孫の交流。先祖の罪について話し合う。歩み寄るだけでも、罪悪感と憎しみから幾らかは解放される。

子孫に罪は無い。顔や名前を知り、同じ時を過ごせば、立場が微妙に違うだけの同じ人間だと分かる。
互いに歩み寄り、わだかまりを解いてゆく。この先、ショッキングなドキュメンタリーのつづきが作られないで済むように。

【映画を振り返って】🌊🤿🏛️
日本で言うと、北朝鮮の拉致被害と水俣病を合わせたような話し。なんだけど、
ナビゲーターがいなくて、解説パートも無い。
地域住民へのインタビューと、開催されるイベントの動画を端から撮影して編集。「後は自分で考えて」と、視聴者にぶん投げてあるので知識が求められる。

ラジオで町山智浩さんが紹介していたのが鑑賞の切っ掛け。
公開当時、話題になっていたのだが、一般の評価が低くて、後回しにするうちに観るのを忘れてしまった映画……。
(あ~、年をとるって怖いわぁ。配信の話題作いくつ見逃したのか考えるのも怖い)

まずは話しを聞かずに1周。
説明がはぶかれているので、何について話しているのかまったく分からない。とくに序盤が厳しくて「途中で諦めた人が多そう」と推測。
監督は水辺が好きなのだろう、テーマに絡めてスキューバーダイビングの講習まで混ぜてあり、断片集の側面が増している。
(おそらく、子供たちを映すことで未来が表現されているのだと思われ)

沈没船を引き上げる、とかではなくて、町の歴史を振り返る話しなので、好きな部類には入るのだけれど、インタビューが中心なので、監督は町好きって訳ではなさそう。

クロティルダの残骸の引き上げの重要性を怨念のように訴える人がいれば「クロティルダなんて重要じゃない」と本質を語る人がいる。
多様性があって宇宙を感じられるのが好き。そもそも、その人の訴えと、苛立ちの原因が=とは限らない。
(わたしなんて、往々にして八つ当たりの対象に選ばれる)

鑑賞後に町山さんの解説を聞いて、背景をやっと理解する。話しが分かりやすく、わたしの訳が分からなかったメモは泡と消えた……。
歴史と照らし合わせて映画を語れる人がいて助かった。
危うく、クロティルダ号と一緒に海に沈むところだった。
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