パワードケムラー

はじめの一歩 間柴vs木村 死刑執行のパワードケムラーのレビュー・感想・評価

4.0
 「はじめの一歩」シリーズで最初から登場していた先輩ボクサーの木村と青木。二人は調子に乗り易いが良き先輩であったが、戦績は決して良いとは言えない。全日本新人王になり日本チャンピオンの道を歩む一歩や、世界を相手に戦う鷹村と比べて良い試合をするとも言えない。泥試合ばかりの凡庸な選手——そんな印象の木村にビッグチャンスが舞い込む。それはかつて一歩を苦しめた上に天才と言われた一歩のライバル・宮田を卑劣な手段で倒したダーティーな天才・間柴だった。
 鞭のようなフリッカージャブを得意とする長身と長腕という天賦の才に、異常なまでのハングリー精神を持った間柴の対して戦う前から追い詰められていく木村。今までは一歩、鷹村、宮田、千堂といった才能あるヒーローたちの物語を観ていたが、ここで一介のボクサーの悲哀が如実に描かれる。今までも新人王戦などで後がないボクサーたちは登場したが、その中でも23歳という社会では若造でもこの業界では年寄り扱いされる年齢や戦歴と戦績、ボクシング業界に入る前の自分と入った後の自分、そして現実味を帯びる“引退”の2文字——ヒロイックなボクシングではない、ボクサーの人生を描いた素晴らしい特別編。