クシーくん

泥棒番付のクシーくんのレビュー・感想・評価

泥棒番付(1966年製作の映画)
3.9
夜の京都を鳥瞰した絵から池田屋事件の現場にクローズアップする。その脇の屋根から、勝新太郎演じる大泥棒の佐渡八がひょっこり顔を出し「こんな物騒なご時世じゃおちおち泥棒も出来やしない」と独言るアバンタイトルが格好良い。

大阪に入った佐渡八は奉行所の与力、田中(内田朝雄)に素性を喝破されるも、放免となり、田中の指示の元、カタギとして同じく前科者の若い男女と京で饂飩屋を始める。偶然新撰組の斬り合いに居合わせた佐渡八はその度胸を見込まれて屯所前の出入りを許されるが...

中盤の展開からひょっとして「三人吉左」のパロディじみた展開になるのかという予想を裏切り、三泥はバラバラに。そこからの展開がやや散漫で退屈だが、ラストシーンまでの駆け抜けるような展開は見事。追儺会に絡めて小判を撒き散らしながら、大泥棒の風格も十分に、啖呵と口上を切る小気味好いエンディングは胆力と芸達者併せた勝新でなければ出来まい。

勝新演じる佐渡八が若い二人を気にかけるのが妙にいじらしくて可愛い。佐幕の尊皇だの煩わしいことは無用。佐渡八には好きか、嫌いしかないのだ。単純明快な悪漢が京の空を舞う。それだけで十分に楽しい。ただいまいち佐渡八の大泥棒感が伝わり辛かった。

油・吹き矢のダブルパンチが最強すぎて笑う。隠れた名作だと思う。
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