Asino

聖なる証のAsinoのネタバレレビュー・内容・結末

聖なる証(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

大飢饉からそう経っていない1862年のアイルランド。この映画に出てくる人たちはみな重い喪失感を抱えている。
信仰心の厚いアイルランドの寒村にやってきた英国人看護師。深すぎる信仰心と科学、みたいな話かと思うとそれは表面的なあらすじにすぎなくて。
家父長制的な権威との闘い、自分の人生を取り戻すこと、そして血のつながりだけではない「家族」を作ろうとする話。
とても重いトーンではあるのだけどちゃんと希望のある話で、とても好きでした。

4ヶ月何も食べていない、と主張し常に神への祈りを口にしている「奇蹟」の少女との対比で、フローレンス・ピュー演じるエリザベスが旺盛な食欲で何か食べているシーンが繰り返される。
彼女は生命力と理性の象徴のような存在に見えるけれども、一方で夜な夜な怪しげな薬を口にし、トランス状態に陥る危うさも隠している。

途中まで先日見た「未成年」に通じるとこがある話だな、と思って見ていました。
極度に宗教的な環境で生まれ育った子供が、神に特別なものを与えられているから食べなくても生きていられると思い込む。周囲の説得の声も聴かない。そんな話かな、と。
でもそこには信仰だけではないもう一つの秘密があって。

前半、少女と主人公の間で相手を何て呼ぶか、って会話が繰り返されるのだけど、後半それが意味を持ってきて、ラストに掛かってきてとても好きでした。

構造的には、閉塞的な環境から断固として脱出する、って話で、ある意味「ドント・ウォーリー・ダーリン」と構造的には近いのかもしれない。フローレンス・ピューはそういう話のまん中に置きたくなる。わかる。
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