カーネル

背中のカーネルのレビュー・感想・評価

背中(2022年製作の映画)
3.0
〝マヨナカキネマ〟レーベル第4弾
(街の片隅で懸命に生きる若者たちの恋とセックスを描く。生きづらい今の世の中はマヨナカ(真夜中)だ。そこで必死に生きる若者を描くという意味でレーベル名をマヨナカキネマと名付けました。
マヨナカにはエロティシズムと“夜明けは近い”という意味もこめられています。………公式HPより)

このレーベルでの越川道夫3部作の第1部となります。
「誰でもない恋人たちの風景」シリーズでお馴染み、孤高の映像詩人が描く〝海辺の性〟は確かに抒情的でありました。(正直〝海辺の性〟という惹句は弱いと思うけどなぁ。)
どちらかと言うと〝性〟より〝生〟の話だったように思えたのは私の個人的思い入れなのかもしれませんが。

性と生と喪失感………。


ハナを演じるは初主演の佐藤里穂。儚げな表情がハナらしかったですね。
そばに寄り添うアカツキ役に大規模映画から深夜のドラマまで果敢に色々な役をこなしている落合モトキ。
ハナの元を去った、アカツキの友達でもあるショウイチロウには越川組常連、最近では映画『almost people』テレビドラマ『すべて忘れてしまうから』が記憶に新しい嶺豪一が、タイトルにもなる〝背中〟をせつなく見せてくれます。薄暗い部屋でパソコンに向き合って見せる背中。森の中に消えゆく背中。大きい背中が小さく見えたりします。

自分の元を去った男。ハッキリとした理由がわからないけど別れ話をしたばっかりに………という思いが拭えないハナは2年もショウイチロウを待っているけど、寄り添ってくれるアカツキとも身体を重ねるわけです。
彼女を求めるアカツキは真剣に友人ショウイチロウのことも心配して探しているし、彼のことが大好きなんだろうこともよくわかります。
ハナとアカツキ、2人の互いへの気持ちもさることながら、2人のショウイチロウに向けた気持ちをどう捉えるか………
そしてショウイチロウの思いが明らかになると、それは優しさだけなのか刹那的な何かなのか考えてしまいます。
でも彼は生ききったのです。決して投げやりにならずに生きた。

三者三様のその思いは、共通して優しい。

優しいからあのまさかの(私的にはへ?そなの?ハナちゃんそれでイイの!)最後のシーンに繋がるのかなぁ………

ショウイチロウが意図せずも一つの区切りをつけた事により、それぞれが一歩、次のフェーズに入ったのでしょうね。
それがいいよ。きっとそれでいい。

でもね、それぞれの〝喪失感〟は
きっとなくならない。

さて越川シリーズの第二部は
中島歩主演の『さいはて』。
さすがU-NEXTさんw次に見るのにどう?と、お薦めしてくれてますw
カーネル

カーネル