碧

高速道路家族の碧のネタバレレビュー・内容・結末

高速道路家族(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

高速道路のサービスエリアにテントを張り、見ず知らずの人に返すつもりのないお金を借りながら食いつなぎ、また別のサービスエリアへと渡り歩く4人家族のお話。

導入はコメディタッチだったが、観ながらわりと早いうちから父親ギウに結構な苛立ちが。

定職も持たず幼い子供も巻き込んでまで寸借詐欺を働き、母親もそんな父親との第三子を妊娠して身重。

何故そんな暮らしをしているのか序盤ではろくにヒントが無いまま、今度はギウの詐欺の被害者ヨンソンに物語の目線が切り替わる。
と同時に私が感じていた苛立ちもヨンソンへの共感に切り替わった。

中盤からやっと伺い知れることになる父親ギウの過去。
そしてまたヨンソンも母親として傷を負った過去が。
それぞれの過去とそれぞれの家族が少しづつ少しづつ混ざり合いながらエンディングへ向かうのだけど…

結局のところ、私はヨンソンの心情以外あまり共感出来る部分がなかった。
すべてはギウの人間としての器が招いたこと、自業自得だと。
とても同情など出来なかった。

2つの家族、貧富の差、犯罪行為、共通項が多いからか「パラサイトの高速道路版」とか言われてるそうだが、趣は違うと私は思う。

あと韓国作品に出てくる警察の無能さには個人的に結構慣れてきたけど、本作のソレはもうワザとかと思うほど薄っぺらくそこに対しても憤りが。

唯一救いだと思ったのは役者陣のレベルが高かったこと。

ヨンソンを演じたラ・ミランが素晴らしい。
あの母性に満ちた表情に魅了された。

そしてギウの娘・ウニ役の女の子がとてつもなく上手い。
彼女の将来がとても楽しみ。

主人公ギウを演じたチョン・イルも観る側に喧嘩売るような芝居は結局上手いからだと思えた。

ラスト、あの可愛い子供達が元気で暮らしていたことだけには喜んだけれど『パラサイト』と並べるには韓国らしい思い切りと血飛沫が物足りなかったように思えた本作。
碧