たおぱお

高速道路家族のたおぱおのレビュー・感想・評価

高速道路家族(2022年製作の映画)
3.6
このタイトルとジャケット写真見て、「え、高速道路で暮らしてるの?めっちゃ危険!」と興味が湧いた私。
観始めてすぐに突っ込まずには居られなかった!
これは「サービスエリア家族」じゃん!!!道路で生活してる訳じゃないじゃん!と…。

高速道路のSAで、寸借詐欺を繰り返しながら信じられない生活を営むホームレス家族の物語…。
父親のわがままに一家全員が振り回されてるのに、すっかり洗脳されてるのか、諦めてるのか、家族仲良く健気に父親に従う妻や子供にびっくりします…。
それなりに明るく楽しく自由に暮らしているような雰囲気すら感じるのが不気味で仕方ない…。

こんな場合は公的な救済制度があるのでは?少なくとも日本なら…わざわざこんな暮らしを選ばなくても…と、もどかしく感じるものの、この父親はそもそも社会との繋がりを拒絶してるタイプなんだろうな…と。
単独ホームレスならまだしも、小さな子供や妊娠中の妻がいるのにこんな暮らしをさせるって…本当に家族を愛してるの????
父親の現実逃避と、自分は1人じゃないという精神的な安定を得るために利用してるだけだろう?と、見ていて段々と腹が立ってきます。

そんな一家に転機がやってくるのですが…思った通り、父親だけが一筋縄ではいかなくて…。
悲しい展開になっていきます。

救いの手を差しのべる、古物商のおばさんの優しさや心の傷を理解はするものの、なんかちょっと行きすぎと言うか、自分の心の隙間をうめるために一家を利用しているような感じもして、結局やってることは父親と同じなんじゃない?
と、一抹の気持ち悪さを抱いてしまったのも事実。

父親を通報して、いない隙に母子を奪えば、こうなることは想像できなかったのか…。
一番支援が必要なのは父親だったんだよね…。警察がしっかりと措置入院なりさせて、母子は民間人ではなくて公的シェルターで再起を図れば…とも思ったものの、施設育ちの母親もその娘も(弟は何も感じずにまだ純粋に父親を愛していたのが泣けた)、古物商のおばさんからの愛をたくさん受け取って、普通の暮らしの営み方や安心できる生き方を学べたことの意味も大きかったんだろうなとも思うので、古物商のおばさんの行動は善行ではあったのだと思ってはいます。
終わり方も含めて、答えがわからない、何ともスッキリしない、考えさせられる映画でした。
たおぱお

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