TnT

ヤクザと地底人間のTnTのレビュー・感想・評価

ヤクザと地底人間(2006年製作の映画)
-
 以前観た「精霊のささやき」の監督、植岡喜晴の作品。なんだこの初期の鈴木清順とエド・ウッドを足したような作品は。映画がギリギリ映画であれるような作り物感が良いので、棒読みもチープ演出も"あり"である。この監督はもっぱら自主映画の人なんだろうなぁ。

 内容のB級感と映画の質感がとても2006年と思えない。植岡喜晴初期作品は最近やってた上映会の予告で断片を見たぐらいだが、殆ど同じ手法なのだ。この手の演出をこの時代に貫くのは逆に勇気がいるというか。学生映画でさえ結構見栄張ってチープさを隠すものだが、「そこがいいんじゃない」精神で素晴らしいなと。

「宇宙へ行くこと。土の中へ潜ることと同じよ」
 地底人と地上人と宇宙人が入り乱れる。上下の階層は階級と同意義であり、ちょっといざこざもあって、それでいて何も解決しないまま気づくと地上は戦争になっていた…。地上人ってのが一番野蛮なんだろうなぁ。地底人から言わせればキラキラした人、それは良い風に聞こえるが、戦火という目まぐるしさを巻き起こす意味では、彼らは目を眩ますキラキラであるという侮蔑の意味があるように思える。僕らはいつだって地底人に恨まれながら生きてると思った方が良いのだ。

 アイテムが謎、ここが良い!ラッパの少年、宇宙人の持つ謎の蜜、手作り感満載ロケット、空飛ぶ目玉…B級の良いとこが詰まってる。文字通りの無鉄砲な発砲シーンもチープで良い。意味が無さそうなディテールへのこだわりも良い。なんかエド・ウッドあたりを見返したくなってきた。
TnT

TnT