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梟ーフクロウーのpepeのレビュー・感想・評価

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)
4.1
王の長男の謎の死という実際の事件をヒントに、巧みなフィクションを纏わせて仕上げた一級品のサスペンス映画でした。面白かった!

盲目の鍼医・ギョンスだからこそ「見えた」真実に、彼も彼の周囲の真相を知る人物たちも。様々な思惑を巡らせて奔走します。

太陽の光の差さない闇夜の中、わずかに灯る明かりはときに頼りなく、ときに道しるべとなる。それは人の心のうちも同様で、自ずから真意を見せる者もいれば、嘘を見せる者も、なにも見せない者さえもいる。

なにもかもが見通せない緊迫した状況の中、白い夜明けまでの間に事態が二度三度裏返っていく。気を抜く暇もなく疾走していく物語は、史実を踏まえた哀切さを湛えた結末へと滑らかに運ばれていき、そこでやっと、ほっと息を吐く。昼間の明かりに出会えた時のような安堵の息を。そんな、息をつかせない物語でした。良すぎでした。

主人公を演じたリュ・ジュンヨルの感情の起伏を抑えた演技も見事でしたが、コミカルな立ち回りの多いユ・ヘジンの冷徹な王の姿もまた素晴らしかったです。また、序盤は結構コミカルな部分もあり、そのシーンを引っ張ったパク・ミョンフンの存在も欠かせない良さがありました。

闇夜がほとんどの映像ですが、のっぺりとした暗闇でなく、灯りや衣、建物の凹凸、鍼などで映像の起伏(といっていいのか)が引き出され、ホラーにありがちなただ暗すぎる映像にはなっていないように思えたので、相当な技術が凝らされたんだろうなとも感じました。

ストーリーラインはシンプルで、朝鮮王朝という時代性もつかみやすいようにか登場人物も最小限に絞ってあり、物語の謎に集中出来て観やすい作品でした。観れて良かったです。
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