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梟ーフクロウーのsyuheiのレビュー・感想・評価

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)
4.0
打ち合わせ前の空き時間に新宿武蔵野館で鑑賞。2022年のアン・テジン監督作品。

17世紀の李氏朝鮮。卑しい身分に盲人として生まれたギョンスは鍼に優れた才能を発揮し宮廷で下っ端医師として召し抱えられる。王・仁祖の皇太子(世子)が人質となっていた清より帰国するも清との関係をめぐり親子で対立、世子は王の命により毒殺される。偶然にもギョンスは暗殺の真相を"目撃"し…。

今でも王による皇太子毒殺がささやかれる『仁祖実録』の世子の死に着想を得た歴史サスペンス。盲人ギョンスには誰にも明かせぬある"秘密"があり、それゆえ王による暗殺を"目撃"してしまい命の危機に晒されるというお話。朝鮮の歴史に詳しくなくても劇中の台詞で利害関係が把握できて誰でも楽しめる。

事態が二転三転しハラハラドキドキ、120分弱で大満足できる1本だった。テンポのよい話運び、適度な説明的台詞に加え、観客自身による理解を促す映像的ヒントが織り込まれているため物語に没入できる。全てを台詞に委ねず観客の理解度を信頼するこうした手法は邦画でも大いに参考にしてほしいところ。

特筆すべきはソギョンの抱える秘密に関わる"闇の描写"。ネタバレは避けるが、その秘密のため本作では暗くて見づらいシーンが多いんだけどギリギリ見える程度にうまく調整されている。闇の中でこそ真実が浮かび上がるという演出はエンドクレジットにまで徹底されておりとてもカッコいい。面白かった!

劇中、何度も言及される南漢山城とは仁祖と朝鮮軍が清の侵略を受けて籠城するも食糧不足で開城したという1636年の丙子の乱を指す。だからこそ清に接近しようとする世子の態度は仁祖にとって耐え難い、二度目の屈服だった、というのがプロットの背骨になる。勉強になった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%99%E5%AD%90%E3%81%AE%E4%B9%B1

https://x.com/syuhei/status/1759007591815135370?s=20

やった!ムービーウォッチメンで初めてメール読んでもらえた!

https://x.com/syuhei/status/1760659160096809275?s=20
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