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梟ーフクロウーのTSのレビュー・感想・評価

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)
3.9
【暗黒内の真実】83点
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監督:アン・テジン
製作国:韓国
ジャンル:サスペンス
収録時間:118分
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 2024年劇場鑑賞5本目。
 5ヶ月ぶりにシネリーブルで鑑賞しました。ジャケットからは想像しにくいですが、まさかの韓国映画の歴史サスペンスモノ。歴史といっても大幅に脚色はしていますが、どうやら仁祖実録という書物に記されている、朝鮮史最大のミステリーとも言われている世子の怪死を扱った作品とのこと。仁祖は李氏朝鮮の16代国王であり、このあたりの歴史は恥ずかしながらそこまで詳しくないので、改めて調べてみて勉強になりました。とは言えどこまでが史実かは定かではありませんのであくまで参考程度にとどめますが。要は、17世紀半ば、清国が台頭し李氏朝鮮は冊封体制の中で清国と結ばれている状況です。その中で盲目の天才鍼術師であるギョンスが王とその周りの企てに巻き込まれていくのです。

 主人公の鍼術師ギョンスはうまれつき盲目であるのですが、実は真っ暗なところだと少し目が見えるという設定です。この設定が今作を面白くしており、ギョンスはある日見てはいけないものを見てしまうのです。ネタバレになるので人名は伏せますが、その者は、ギョンスが盲目であるため、見えるわけがないということで平気でとあることをするのです。一瞬、ギョンスは見えているかの反応をするため、ジャケットのような状況になります。確かに、目が見えていないならば、針を目の前に持ってこられてもびくともしないはず。このあたりから今作は一気にシリアスさが増して、面白くなってきます。

 タイトルの梟とは、ギョンスの目の状態を表しており、暗いところだと見えるが、明かりが入ると見えなくなってしまうということです。しかし、そんなことを知っているのはごく一部の人間だけなので、ギョンスが目撃者として名乗り出ても、盲人が何を目撃したのかと嘲笑われるだけであり、非常に難しい状況となります。圧倒的なハンデがある中、ギョンスはこの恐ろしい企てを暴くことができるのでしょうか。梟というタイトルをつけるだけあって、ほぼ全編薄暗いシーンです。怖くはありませんが適度な緊張感が持続され、見ていて飽きません。こういうのを朝飯前のように作ってしまう韓国映画界はやはり流石だと思いましたね。

 ところで、ギョンスが作中に何度か言っていた「弱者は見てみぬふりをしないと生き延びれない」という言葉には考えさせられました。見てみぬふりをするというのは、卑怯者と言い換えれるのですが、この世は残酷であるため、やはり正直者や勇者が痛みを味わうことになるのです。ある意味、逃げ続ける弱者こそが、一番生き残れるタイプの人間なのかもしれませんね。見に行って損はしませんでした。
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