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梟ーフクロウーのganaiのレビュー・感想・評価

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)
4.0
「落下の解剖学」に続いて視覚障害者が登場する作品を鑑賞したけど、こちらは盲目の主人公が大活躍する極上のエンタメ作品。

1645年の朝鮮王朝時代に謎の死を遂げた王子の事件に盲目の鍼師ギョンスを絡めた時代劇なのだけど、宮廷医としてキャリアを築いていくギョンスのある秘密が明かされると共にドラマの加速度が上がり俄然スリリングになる展開が素晴らしい。

話が進むごとにイーサン・ハントさながらに誰を信じて良いか分からなくなり、それまで障害を抱えながら文字通り目を閉じ口を閉ざして生きてきたギョンスが、追い詰められた末の最後の決断が「この世に起こっている理不尽や不正義を知りながらお前は黙っていて良いのか?」と観客に強く呼びかけてくる。

脚本や演者を含めた人物造形も見事だが視覚障害者ギョンスが磨いた聴覚・触覚の表現もまた見事。

大勢が入り乱れる王宮内の動きを特定の音だけをサラウンドで強調したり、身体に刺した鍼の振動でソナーの様に心の動きまで察知する事でギョンスの探偵スキルの高さを表現するなど今までにない斬新な演出だったと思う。

途中明かされる秘密の特性により映画の多くが薄暗く、ギリギリ見える明るさに設定されているので、出来れば劇場での鑑賞をお勧めする。
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