垂涎の「見てはいけないもの」を堪能するがいい。
俺たちは梟。
異次元の宵闇にようこそ。
以下、ネタバレを含みます。
盲目の鍼師、ギョンスはその腕の良さを認められ、宮廷内の御医の助手として働き始める。彼には重い病気を抱える弟がいた。弟の薬代を捻出するためにも彼はある秘密を抱える必要があった。
《彼は薄闇の中では少し視える》
王の子、ソヒョンの容態が変貌したその夜、その宵闇に潜む静寂が解き放たれる。
王は終幕間際、叫び続ける。「黒幕は誰だ。誰も信用出来ない。」
ただ、ギョンスはギョンス。差金など無い。俺の為、俺と弟のため、自分自身の正義だけ抱えて奔走する。
全身がこの暗闇に溶け込んでいくという新鮮な映画体験。我々も梟。敏感な聴覚と視覚で、この闇を暴く。塗れる政権争い。どの声を殺す?闇が深まる中、姿を現すのは王の姿をした獣。
盲目だからこそ、穿つ。秘密をうち明かした後に、もっとよく見ろと拡大鏡を渡した王の子ソヒョン。見て見ぬふりをしなくていいとギョンスに慈悲を与えた。
一方、王は盲目を利用した。見えないことを利用しようとした。
混乱の中、崩れていく牙城。
「あなたには何が見えていますか?」