わたしは〝暗器モノ〟が好きで、銃とかナイフのようなメジャーではないものを使った攻撃(主に殺し)の描写がたまらないタイプの人間で、そういうところでいくと本作は最高でしたね。最高です。
盲目の鍼灸医が主人公というところでなにをやいわんやですが、その鍼術描写も含め、李氏王朝時代の宮廷陰謀劇として、めちゃ面白かったです。
ミステリー展開としてはわりとオーソドックスな筋立てなんですけど、主人公が盲目の目撃者で、それが陰謀のど真ん中にいる、という設定がサスペンスとして効いててそこがまず出色だし、実は夜だとちょっと視えるという都合のいい設定が〝梟〟というモチーフでもって暗喩として機能していて、つまりはこのエンターテインメントが、権力に対する「庶民なめんな、ちゃんと見てるかんな」という突き上げにもなっているところが、この映画のラストにドヤ顔で出てくるタイトルにもなっていて快哉!
切羽詰まった施術中に蝋燭が消え、いきなり眼前に陰謀が現出する!というショックとスリルの展開は本作の特徴を濃縮したような名場面でしたね。
ひとつの史実の不可解な死からこれだけのプロットとキャラクターと見せ方をエンターテインメントに昇華した手腕は見事です。
監督はこれがデビュー作みたい、すごいねこのクオリティは。
キャラクターアークや葛藤の組み方が教科書的で心地いいし、映画の見世物としての勘所をビシバシ突いてくれる演出がなかなかでしたよ。
ギョンスの叛逆が徒労に終わり、権力が暴走して人がばかすか屠られていく絶望感はたまりませんでした。
そんなに熱心に追ってるわけじゃないけど、ユ・ヘジンさんのファンとしては、本作での名演にも快哉を送りたいと思います。
権力者にならざるを得なかった、またその器ではなかった男の哀しみを滲ませ、単なる勧善懲悪ではなく、朝鮮という国の歴史を体現するような存在として素晴らしかったのではないでしょうかね。
俳優ユ・ヘジン、いい男。
ということだけど主張しておきたいと思います。
日本の座頭市や仕掛人などが影響してるのかしらん?と思いましたけど、梟おもしろかったでーす!