フクロウ

梟ーフクロウーのフクロウのレビュー・感想・評価

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)
5.0
私は見ました。私は見ました。私は見ました。

これ、朝鮮の歴史モノに仮託した、しかし近時のMetoo運動に連なる、権力者による密室での人権侵害の告発じゃんね。立場が弱い障害者の証言だから価値がない?しかし、結局はみんな権力には逆らえなかったけども、誰に理があるかはかろうじて判断できた。それが救い。歴史ジャンルからかかる縛りで、王の断罪までは至らなかった、つまり悲劇になってしまったのは、現職のローガン大統領の逮捕に至った『24シーズン5』とは時代も国も違うためやむを得ないことではあるが、観ていて苦しかった。味方だと思っていた判相すら、後継王を選ぶ権限を与えられたことで、王による世子毒殺の証拠を握りつぶす権力と権力の結託ぶり。そして子供や女性すら殺す。主人公がこれまで自身と病身の弟のために、保身で「見えない」こと「見ないこと」つまり「見て見ぬふり」をしてきたのに、ここ一番で世子の子を救うために命を投げ出してしまったやむに止まれなさはわかる。これこそ木庭顕に言う徒党に押し潰される「最後の一人」の最たる例だろう。あまりに見事。また、盲人=目が見えない人間に、目を閉じたままでいればよいものを、と言う王のセリフは、そのまま声の小さなマイノリティはそのまま黙っていればよいものを、に繋がる。

ただ、別に「全感覚麻痺ミステリー」とかではないやろ。『インセプション』とか『ドミノ』あるいは『ターミネーター』がそれに相応しい。
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