このレビューはネタバレを含みます
「薬屋のひとりごと」の1エピソードでありそうなウェルメイドな宮廷サスペンス。実際にあった怪死事件の裏側を大胆に脚色したって感じ。
日が出ている間は目が見えないが夜になると少しだけ見えるようになるという主人公の設定を有効活用し、スリリングな展開に仕立てている。身分の低さ故に巧く動けないもどかしさもサスペンス要素を強めている。
一方で、予想を超えるものはなかった気もする…登場人物の生死は史実準拠なので仕方ないこととはいえ。逆に言えば、予想できるのにスリリングなのは演出の巧さだが。ラストはちょっと無理があるかな。そのオチにするなら、なんで主人公は生き残ったのかをもう少し丁寧にやってほしかったかも。最初、主人公が保身に走ったせいで王子の妃が殺されるのは胸糞悪いが、そうしないと絶対主人公が殺されていたというのがやり切れなくて良い。このあたりの後悔や怒りがもっと描かれていたら良かったのかな?
事前情報だけだとシリアス一辺倒な作品だと思っていたので、序盤は思いがけずユーモラスで驚いた。カメラワークと編集で観客を笑わせることのできる監督だと思うので、ユーモアある場面をもっと観てみたかったかも。ハイライト全部画面暗いしなあ…いやそういう映画なんだけど。
ユ・ヘジンは実年齢以上に老け込んだ芝居が見事だった。猜疑心に囚われた姑息な王様で、クソなんだけど哀れさが際立ってるんだよな。