シバザキ

猿の惑星/キングダムのシバザキのレビュー・感想・評価

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
4.0
 猿の惑星シリーズはシーザー3部作しか観ていませんが、その3作がどれもクオリティが高くて面白かったので今作もそこそこ期待して観に行きました。映像クオリティは高いし、シーザーがいない猿の惑星でのお話としてもなかなかいいところまで行ったのではないでしょうか。

 前3部作が人間世界から猿の惑星への変遷のきっかけだとしたら、本作は支配権が人間から猿に移り変わるちょうどグラデーションの時期を描いていると言えるでしょう。猿側の指導者のシーザーも亡くなり、彼の信念だけが独り歩きして後世の猿たちに様々な形で引き継がれているのが面白いですね。主人公も一応一般サルの一人の青年なので、その視点からの物語もテーマとしては上手いと思ったり。
 ストーリーの流れもオープンワールドゲームみたいで結構スムーズだった気がする。ちょくちょくロード・オブ・ザ・リングみたいなシーンがあったりして、ジャンル問わずいろんなエンタメのいいところを的確にかいつまんでいるようで映画作りが上手い。

 新主人公のノアもよかった。CG表現が素晴らしいのでアンディ・サーキスなしでも表情豊かなイケメンエイプっぷりがいかんなく出ていたと思います。最初は見下していた人間との協力や、そんなこんなを経てのあのラストと、ちゃんと一人の青年の成長譚として見ごたえがありました。人間の少女ノヴァはどっかで見たことあるなーと思ったら『ウィッチャー』のシリラ王女やないか!
 また、メインヴィランとなるプロキシマ・シーザーが個人的にはスゴく刺さりました。中にドウェイン・ジョンソン入ってんのかと思うほどに豊かな表情筋とカリスマ力のある(と本人は思っているであろう)身振り手振りの一つ一つが愛らしい。すごい荘厳に登場したと思ったら演説台にはちゃんとよじ登るところとかもかわいい。両手を大きく広げての「What a wonderful day!!」は真似したくなること必須。予告ではガンガン出てきていたから常時登場するのかと思いきや、上映が1時間以上立ってからの登場だったのが悔やまれる。

 キングダムなんて大掛かりなタイトルが付いていたので、でっけーサル王国がドドーンと出てくるのかと思いきや、決してそんなこともなく。ちっちゃい猿の集落が点在している世界の話だったのはちょっと残念。前述の通りゲームみたいなストーリーとロケーションなので、映画としてはどうなのって思う部分も多少はある。
 それと上映時間が長すぎ。2時間半以上あんのかい。それでいて別にこれ一本でまとまっているって話でもないので、正直途中眠っちまう箇所もありました。

 サルたちのCGに違和感はないし、人間の知能が低下しつつある世界のお話をやりつつ「ホント人間って奴らは…」となるストーリーは普通に面白いので映画好きなら見ない手はないでしょう。散々ゲームっぽいなんて言い方をしてしまいましたが、ウェス・ボール監督は次にゼルダの伝説の映画を作るお方なので、本作を観たらむしろそっちの期待が高まりました。言われてみればこの映画もブレワイっぽいし。
 ニホンザルっぽい造形のサルがそこそこ重要な役どころだったのは嬉しい。まさか同じ月に『ゴジラxコング』に続いて、重いものを運搬させられるおさるの奴隷が見られるとはね。
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