てっぺい

猿の惑星/キングダムのてっぺいのレビュー・感想・評価

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
4.0
【アンサー映画】
CGと分かっていても、体が錯覚する没入感。前三部作へのリスペクトに感じる製作陣の誠実さ。衝撃のラストで有名なシリーズ第一作へ、巧みな脚本でアンサームービーと化すラストが素晴らしい。

◆トリビア
○ ノア役のオーウェン・ティーグは「ノアにはすごく共感できました。ノアは自分に自信がなく、『自分にこの役が務まるのだろうか?』と僕自身が抱いていた感情と同じでした。ノアはこの物語の中で、自分を知り、自分に何ができるのかを発見していくのです」と、自分とノアとの繋がり、物語におけるノアの成長について語った。(https://eiga.com/news/20240314/8/)
〇顔にはパフォーマンス・キャプチャーに必要な粒、頭にはカメラ、さらにタイツをはいての撮影だったというティーグは「自分が演技をしているということすらほとんど忘れられる」と振り返る。「猿の演技をすることは、“自分と違うものになってみたい”という、そもそも自分が俳優になりたかった理由を思い出させてくれたんです」(https://eiga.com/news/20240509/10/)
○ ノヴァを演じたフレイヤ・アーランは本作について「ダイナミックなアクションシーンがたくさんあるのですが、人間が追いかけられる場面など一作目へのオマージュも含まれているので演じていて楽しかったです」と明かした。(https://m.crank-in.net/news/144889/1)
○フレイヤは役作りについて次のように語る。「ノヴァを演じるためにいろんなリサーチをしたけど、ネタバレになってしまうのでそれが何かは言えないの。でも彼女にはバックストーリーがあってそのディテールを作り上げることが私の役作りのメインだった。」(https://screenonline.jp/_ct/17698953)
〇本作は、俳優による演技をもとに、動作や細かな表情をCGに落とし込むパフォーマンス・キャプチャーで撮影。プロキシマス・シーザー役のケビン・デュランドは「すごく自由になれた感じがして、目まで震えるほどエネルギーを出し切りました」と語る。(https://eiga.com/news/20240509/10/)
○監督のウェス・ボールは大の日本好き。「日本から生まれた文化や芸術が大好きで、僕はアニメと共に育ちました。」と語っており、(https://www.20thcenturystudios.jp/movies/kingdom-apes/news/20240503_01)
宮﨑駿作品などにも造詣が深く、作品にそれらのエッセンスも多分に盛り込まれている。(https://eiga.com/movie/100676/special/)
○ プロダクションデザイナーは「この映画でグリーンバックの撮影は10%ほどで、ほとんどがロケかセットを作成しての撮影でした」と意外な事実を明かした。(https://natalie.mu/eiga/news/572163)
○監督は、本作に影響を与えた作品としてメル・ギブソン監督の『アポカリプト』(2006)を挙げているほか、「スター・ウォーズ」「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや『ラストサムライ』(2003)などの要素もあるという。(https://screenonline.jp/_ct/17698930)

◆概要
SF映画『猿の惑星』シリーズの第10作目で、そのリブートシリーズ第4弾。
【監督】
「メイズ・ランナー」シリーズ ウェス・ボール(「ゼルダの伝説」の実写化に取り組むことが決定している)
【出演】
「To Leslie トゥ・レスリー」オーウェン・ティーグ
ドラマ「ウィッチャー」シリーズ フレイヤ・アーラン
「ファーゴ」ウィリアム・H・メイシー
【公開】2024年5月10日
【上映時間】145分

◆ストーリー
300年後の地球。荒廃した世界で人類は退化し、高い知能と言語を得た猿たちが地球の新たな支配者として巨大な帝国「キングダム」を築こうとしていた。若き猿ノアは年老いたオランウータンから、猿と人間の共存についての昔話を聞かされる。ある日、ノアは人間の女性と出会う。その女性は野生動物のような人間たちの中で誰よりも賢いとされ、猿たちから狙われていた。彼女と一緒に行動することになったノアは、本当の人間を知るうちに、キングダムに違和感を抱き始める。


◆以下ネタバレ


◆シーザー
前作の続き、シーザーの弔いから始まる冒頭。エイプ達が“一緒”を示すあのポーズで送る姿に、本作で就任した監督による前三部作へのリスペクトを感じつつ、本作ではこのシーザーが一つのテーマである事がここに記される。誕生日が1日違いでもアナヤに敬意を示すノアに見る、厳格な縦社会に生きるエイプ達。その中で“最初の長老”と呼ばれたシーザーは、もはや神格化された存在で、その名を冠するプロキシマスもいれば、彼の言葉“エイプ一緒強い”をエイプ達は連呼する。ラカのチャームやキングダムの壁に描かれていたあのマークも、三部作第1作でシーザーが育った部屋の窓枠のそれ。ミソなのは、神の存在であるそのシーザーの、各々による拡大解釈。プロキシマスは神の名の下、圧政を強いてキングダムを建国。ラカの“シーザーは許すはずさ”的な身勝手なセリフもあれば、目の前で同種族に手をかけたメイに“人間と共存を唱えたシーザーは正しいのか”と吐くノアのシーンもあった。それらは現代の宗教観や紛争に対してのメタファーでもあるようで、過去作に違わず、本作でも強いメッセージを発信していたと思う。

◆没入
卵を採りに崖を飛び交うノア達。CGとは分かっていつつも、崖から落ちそうになる姿に足がすくむすくむ。イーグル族の村で落下するノアにも足がすくむ。格納庫の崖を、メイを担ぎ登るノアが落下しかけるシーンにも足がすくむ。同じ崖をプロキシマスが落とされるシーンにも足がすくむ。エンドロールの“Motion”枠の桁違いな人数に、そういえば本作のエイプ達はモーションキャプチャだったと思い出すほど、世界観に没入していた事に気づく。グリーンバックでの撮影は10%ほどで他はロケやセットだったと製作陣が明かしている通り、その作り込まれた世界観に1ミリの違和感もなく、終始没入して見ることができた。

◆ラスト
メイが格納庫から持ち帰った“本”(とノアに説明していた)が基地に持ち込まれ、交信が始まるラスト。ノア達が天体望遠鏡を覗く姿に、この星が地球ではない惑星(であるという映画表現)だという事が明かされる。1968年の第1作の、実は猿の惑星は地球だったというラストに、全く正反対のラストでそのアンサームービーの様相を呈した本作の演出にニヤリ。振り返ると、水のほとりで人間達を見つけた時のメイの表情はとても物憂げで、別の惑星に降り立ち、すっかり退化した人間と出会った時の複雑な感情を表していたと思うと合点がいく。(基地の入り口では抗ウイルス完全防備だったので、メイがなぜ防備なしでこの星で動き回れたかの説明はなかったが)いずれにしても、もし続編があるとすれば、メイとその仲間達が深掘りされ、ノア達エイプとの共存の是非が描かれるはず。そちらにもぜひ期待したい。

◆関連作品(すべてディズニープラスで配信中)
○「猿の惑星」('68)
シリーズ初期作。時代を考えると猿のメイククオリティが高い。
○「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」('11)
リブート第1作。当然初期作や第4作へのオマージュも。CG猿が実にリアル。
○「猿の惑星 新世紀(ライジング)」('14)
リブート第2作。人類の大多数が死にえた世界で人と猿の共存可否が問われていく。
○「猿の惑星 聖戦記(グレイトウォー)」('17)
前作。ラストで猿達は新天地を見つけるが、シーザーは生き絶える。

◆評価(2024年5月10日現在)
Filmarks:★×3.9
Yahoo!検索:★×3.5
映画.com:★×3.6

引用元
https://eiga.com/movie/100676/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/猿の惑星/キングダム
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