ノラネコの呑んで観るシネマ

ロストサマーのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ロストサマー(2023年製作の映画)
4.3
88年生まれの俳優たちが立ち上げた映像ユニット、889Filmの初長編。
秋、冬、春の三つの季節の名前を持つ三人の男女の物語だ。
三人はそれぞれ失われた「夏」に縛られている。
老人の秋は、最愛の妻の「夏」を亡くし、ずっとその日暮らしを続けている若者フユは、幼い頃母の「夏」に虐待の末に捨てられた。
主婦の春は、夫の「夏」と一緒に暮らしながら、心も体も離れてしまっている。
ひょんなことから秋とフユが出会い、また別の時系列ではフユと春が出会う。
隣り合う季節同士は交流するが、春と秋には接点が無い。
人生の道程では、生きることの意味が分からなくなったり、過去の出来事に囚われてしまうことはありがち。
でもちょっとした出会いや出来事が、自分でも気付かないうちに分岐点を作っていることもある。
ドラマチックな“事件”は何も起こらないが、生活しているだけで人間はずっと変わってゆく。
監督・脚本は889Filmのメンバーの麻美。
年齢も性別も違う人々の、閉塞した人生に光がさすまでの物語を丁寧に描く。
俳優ユニットの作品だけに役者が皆良いが、個人的には春を演じた中澤梓佐が強く印象に残った。
ブログ記事:
http://noraneko22.blog29.fc2.com/blog-entry-1648.html