幽斎

テリファー 終わらない惨劇の幽斎のレビュー・感想・評価

3.0
恒例のシリーズ時系列
2008年   The 9th Circle 11分の短編、アート・ザ・クラウン誕生
2011年 3.8 Terrifie 20分の短編、全てが此処に凝縮
2013年 2.8 All Hallows' Eve 83分、初の長編
2016年 2.6 Terrifie 日本は2週間限定公開、そりゃソウよ(笑)。
2022年 3.0 Terrifier 2 本作、続編
2024年   Terrifier 3 制作中
2026年  Terrifier 4 構想中

ジャグリングな残酷描写が話題を呼び、北米でスマッシュヒットをカッと飛ばしたヴァイオレンス・ホラーの続編。アップリンク京都で鑑賞。

原題は公式には「Damien Leone Terrifier 2」監督名をInするのは80年代ホラー映画の定石、アトモスフィアも80年代を強く意識した創りとタイトルで宣言。私の専門はミステリーなので稀にフォロワーの方でホラー専門と誤解される事も有るが、確かにレビューしてる大半は、角度に依ってはホラーだろう。しかし、「意味も無く人が殺されるだけ」映画は好きでは無い。一番嫌いなのは「アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ」レイプ・リベンジ、何が面白いのか頭の悪い私にはサッパリ分らない。

さぁ、本音を吐いた所で(笑)。スラッシャー苦手な理由は露骨なレトリック。ホラーのジャンルで特にスラッシャーは、焼きそばと青のりの様に切っても切れない「Final Girl」。私が知ってる最古は「暗闇にベルが鳴る」Olivia Hussey、1974年の作品。何故か最後まで生き残るヒロイン。結末が見る前から分かるので嫌いだが、女性にホラーは「Chastity」貞操、純潔を求める。セックスしない処女性は男性優位の都合の良い解釈として、使い捨ての割り箸の様にその場限りで消費されて終わり、早い話が男の幻想。

同年公開「悪魔のいけにえ」同じプロットだが、ファイナル・ガールを時代と共に上手く変化させて生き残ったのがレビュー済「ハロウィン」「スクリーム」ホラーの両巨頭。ヒロイン自体が主役に抜擢される作品も増え。レビュー済「ハッピー・デス・デイ」「X エックス」等々。映画のジャンルで最も時代性を感じるのがホラーと信じて疑わないが、令和の世の女性は男性を喜ばすツールでは無く、ステレオタイプをブチのめす延長線上に有るのがシエナ役Lauren LaVeraの活躍に男も跪くだろう。

殆どの方は前作も見てると思うが、前作同様ハリウッド、メジャーではなく純粋な自主製作映画。監督は演出、脚本、編集、資金集めと八面六臂の活躍だが、ハロウィンの夜にピエロの仮装をした「アート・ザ・クラウン」中身は連続殺人鬼が残酷に殺しまくる単細胞なスラッシャー、に見える。秀逸なのはアート・ザ・クラウンの存在感、他のホラーと違うセンテンスでパントマイムから繰り出される意表を付く恐怖描写は実に個性的。

監督はデビュー作の短編「The 9th Circle」を創る為に独学でSFXを学んだそうで、自前で特殊効果を創れるだけに、ラーメン二郎の様なマシマシのゴア描写は、ハリウッドに勝るとも劣らないクオリティ。故にダークウエブのスナッフフィルム顔負けの雨霰は極めて猟奇的、ソコだけコーヒーの様に抽出すると「嗜虐のドコが面白いねん」決め付けられるが、決して残酷ファーストでは無い。「全米が吐いた!」←嘘に惑わされてもイケない。スラッシャーの歴史を変えた前作から、更にブースト圧高めのフルスロットルの本作は、ホラーの新陳代謝の進化系。褒めてますよ(笑)。

もう一点褒める点はパントマイムのクオリティ。他のスラッシャーと一線を画すのがアート・ザ・クラウンの名の通り、パントマイムのアーティスティックが「プロフェッショナル 仕事の流儀」、アート性と対極の残虐性との対比が観客の想像力も描き立てる。無言と言うパフォーマンスがユーモラスと言う別角度の面白さを増す事で、「ヤル側」と「ヤラレル側」主従逆転。中の人David Howard Thornton(普通にイケメン)、元は声優さんらしく前作の殺人シーンの連続に家に帰っても気持ち悪くて眠れなかった(良い人じゃん、お大事に(笑)。まぁ立派な「代表作」として記憶に残るから大丈夫よ。

ソレにしても私の評価とはアンビバレンツなアメリカのメタスコアには素直に驚く。R18+の作品が配信への忖度でメッキリ減った事も有るが、私から見れば本作の一番の問題点は138分と言う長さ、コレこそ拷問に近い。前作が84分、何を足したのかと言えば勿論残虐シーン。幾ら何でも同じ事の繰り返しでは流石の私も飽きちゃう。前作から追加された「謎の存在」も謎の存在。不死身は悪魔の仕業、と言われてもサッパリしっくりこない。シンプルに殺られる事で日常生活が崩壊し恐怖が倍増、で良いのに続編の性と言うべきか、要らんモノを足した上に致命的なのは、お約束のエロが決定的に足りない。何の為にスラッシャーを劇場で観たのか!(笑)。ファイナル・ガールの出し惜しみはアカンよ。

既に3作目がポスト・プロダクション。更に4作目の構想も有るが、本作を高く評価するSam Raimi監督がソニー・ピクチャーズと組んで新たなプランも有るとか。時系列を見て驚かれたかもしれないが、アート・ザ・クラウンも既に5作目。本作の製作費たったの25万$、北米で1000万$以上を売り上げ、2022年製作で最もコスパの良い作品に認定。だから映画はヤメられない止まらない。

と言う訳で苦手なスラッシャーを何とかヤリ切りました。いやぁ~頑張りました(笑)。
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