悪魔の毒々クチビル

ヘルホール ー悪霊館ーの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

ヘルホール ー悪霊館ー(2022年製作の映画)
3.6
邪悪なのは人間か、悪魔か

修道院に潜入捜査しに来た警察官が地獄を見るお話。


マジで日本で推しているのは俺含めて片手で数える程度しかいないんじゃないかってくらい人気のない、ネトフリ配信ホラー「誰も眠らない森」シリーズ監督バルトシュ・M・コヴァルスキによる新作ポーランド産ホラー。
あちらではシンプルなゴアスラッシャー(2は意外性のある展開でしたが)だったのに対して、今作は宗教や悪魔がテーマです。

ライターであるナマニクさんも「誰も眠らない森」シリーズの記事を書いていまして、そこで知ったのですが、結構ポーランドへの社会批判が含まれていたようですね。
っていうのを踏まえて今作を観てみると、今回は宗教団体への批判や皮肉なんかもちょいちょいあるってことなのかなーと。
まぁ劇中でも悪魔を召喚して遣える為、罪を盾に人を拉致って殺していくを繰り返して行くのは結局利己的な行動ですしね。
個人的には後半辺りの儀式のシーンは、散々盛り上げておいて失敗して「…え?合ってるよね?手順これで良いんだよね?」「うーん、取り敢えず今日は解散!!」みたいにグダつく様をちょっと滑稽にも描いていてぶっちゃけ笑えました。

今回はそんなにゴアシーンもありませんが、冷凍庫の場面は中々強烈でしたし主人公が見た幻覚なのか分かりませんが、あの謎の目玉棒も気持ち悪くて印象的でした。
あとびっくりするくらい、主人公マレクのキャラが薄くて。
冒頭の赤ん坊がマレクだったんだなっていうのは直ぐに分かるんですけど、本当にただの潜入捜査官Aくらいのキャラ付けしかなくて。
しかも裏で探っているのもバレバレだったし。
ただ最後まで観てみると、あくまで彼も一つの器に過ぎなかったんだなと。マレクという人間どうこうよりも、彼がたまたま適正だっただけなんだなとね。それならそれでいっかと思えました。てへ。

一見立派な修道院の外観とは裏腹に、冷えきったような不気味な雰囲気や所々の小汚ない箇所とか、セットは割と凝っていそうでした。
あと司祭達の食事があまりにクソ不味そうで気色悪かったし、大量の死体を無造作に庭で纏めて焼く所とかも凄く気味が悪くて良かったです。

ラストは所謂「ようやく盛り上がって来たかと思えばそこで終わっちゃう」タイプで、ここは物足りない部分もありましたがまぁ物語上、ここが一つの終着点でもあるので意外としっくり来ちゃうんですよね。
で、例のアイツ。ハエが大量に湧いた後に降臨したってことは多分アレなんだろうけど、顔面は生理的嫌悪感満載で結構好きです。引きで全体像を見るとまぁまぁダサいんだけど。

確かに丁寧な脚本とはお世辞にも言えないし扱っている題材や描写も「誰も眠らない森」の方が好みなんだけど、今回も何ヵ所かでホラーファンに刺さるシーンをしっかり用意している辺り、やはり評価しちゃいますよね。
因みに今作含め、コヴァルスキ監督のネトフリ配信作品はここフィルマでは全て平均点が2点台という驚異的な低さ。
でも毎回ネトフリで配信されているってことは、きっと需要はあるんだ。きっとそうなんだ。これからも頑張って欲しいんだな。
俺は「誰も眠らない森3」をずっと待っているからな!!!