みむさん

The Forger(英題)のみむさんのレビュー・感想・評価

The Forger(英題)(2022年製作の映画)
3.8
バンクーバー国際映画祭にて。

ルイス・ホフマン主演、実話ベースの映画。
ベルリンで暮らすユダヤ人シオマ・シェーンハウスが偽造IDで同胞を救い自身も逃げ延びようと奮闘する話。

ナチス、ホロコーストが背景にあり、ユダヤ人を多く救った者の話ではあるが、惨劇を描くわけでもなく、彼を英雄として描いてるわけでもない。
この映画はシオマの度胸の良さ、厚かましさに焦点が当てられていた。心臓に毛が生えてるとはこういう人のことを言うのかも。

隠れるくらいならナチのふりして表に出てしまえという発想や、すでに去った家族の財産を売却しようという発想。
これシオマが若くてそこまでこだわり無さそうだから踏ん切りついたのかもしれない。ある程度信念が強い人ならナチに資産売却ましてや成りすますなんて、生きるためとはいえかなりの葛藤を要すると思う。

こんな方法で偽造できちゃって、しかもまんまと欺けるものなのかと驚くが、この時代偽造を見抜く技術もそこまで発達してなかったのかな。

理解者であり友人デッドの存在も大きい。彼との友情も描かれるがピンチになった時のシオマの行動は辛いものがある。友情を取るべきか、自分の安全を取るべきか。

確かに同胞を多数救ってはいたようだが、同時に何度も危機に晒されていた。その度に口手八丁で逃れ、よくも出来たもんだと感心すると同時に、助からなかった人のことを考えるとなんとも言えない気持ちになる。

綺麗事だけでは生き残れない悪知恵やむ無し残酷な時代を「生きること」だけを考えてなりふり構わず突き進んだ青年の話だった。

彼はグラフィックアーティストになったようだ。