東京フィルメックス 特別招待作品
『北京の自転車』『在りし日の歌』のワン・シャオシュアイ監督新作。
『在りし日の歌』の重厚な年代記から一転、肩の力を抜いて軽妙に撮ったのだろうな。笑いが起きるところも多かった。
コロナがまだ中国国内のみだった2017年、タイ・チェンマイのホテルで過ごす中国人たちを群像劇的に描いている。
ホテルのシンプルな内装が白黒撮影と上手くマッチしている。
かなり毒っ気のあるブラックコメディ。ソレンティーノに近い感じかな。
構成も非常に上手い。かなりトリッキーではあるけど、一切の混乱なく物語を捌き切るあたりは流石シャオシュアイ。
中年夫婦、母娘、男とその介助者という三組がそれぞれ交わりながらクライマックスへ向かっていくこの展開力は素晴らしい。
男と介助者のタイ人男性との関係で心が痛かった…
単なる軽妙なコメディではなく、マイノリティーや反体制、不倫など社会的な要素も入れて面白いブラックコメディにしてしまうのはスゴい。
ラストは正直そんなバカな!とは思った。ちょっと物語を作り込みすぎたかな。でもそれが狙いのようでもあるし。
なにより全体を通してすごく面白かったから別にいいかな。
時折びっくりするようなショットも入れつつ大きなうねりの中に引き込んでいく。
流石シャオシュアイと感嘆するしかない傑作。