ぶみ

あしたの少女のぶみのレビュー・感想・評価

あしたの少女(2022年製作の映画)
4.0
あなたの見えない眼差しを、私は見ている。

チョン・ジュリ監督、ぺ・ドゥナ、キム・シウン主演による実話をベースとした韓国製作のドラマ。
コールセンターで実習生として働いていた高校生の死と、事件を追う刑事等の姿を描く。
主人公となる高校生・ソヒをシウン、刑事・ユジンをドゥナが演じているほか、チョン・フェリン、カン・ヒョンオ、パク・ウヨン等が登場。
物語は二部構成で進行、前半は実習生として大手通信会社の下請けコールセンターで働くソヒが、後半はソヒの死の真相に迫ろうとするユジンが主人公となるのだが、それぞれ、情報量も多く、視点が全く違うので、まるで違う作品を二本観ているかのよう。
公式サイトによれば、後半のユジンパートは、チョン監督の創作である反面、前半のコールセンターパートは、2017年に韓国の全州市で実際に起こった事件を忠実に再現しているとのことであるが、そのコールセンターは、顧客から様々な罵声を浴びるのに始まり、顧客解約阻止率による成績主義やノルマ、サービス残業、賃金の搾取かつ賃金未払い、そして内部の不祥事を口外しないという覚書と、ブラック企業で考えられる悪事のオンパレードであり、そんな中、日々憔悴していくが、勝ち気に振る舞うソヒを、シウンが好演。
それに対し、後半では、警察内部で反発されながらも、ユジンが企業に対し毅然と立ち向かっていくこととなり、サスペンスとしても秀逸なのだが、そこには、韓国の教育システムそのものという大きな高い壁が立ちはだかり、見ていてもどかしいことばかり。
ただ、本作品の救いは、本国での公開後、実習生を守るため、勤労基準法の改正案が国会に提出され、その案が通称「次のソヒ防止法」と呼ばれていることであり、それはまさに映画の力は、まだまだ衰えていないと感じさせてくれるところ。
何故か、字幕が何の変哲もないゴシック体であるので、それだけで映像にB級感が漂ってしまっているのだが、なんのなんの、前半のドラマ、後半のサスペンス、どちらも重厚かつ対比が巧みな構成となっており、日本でも他山の石とすることなく、原題である『次のソヒ』を出さないことを体現するべく、多くの人に触れてもらいたい骨太な良作。

なぜ傍観を?
ぶみ

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