KOZO

あしたの少女のKOZOのレビュー・感想・評価

あしたの少女(2022年製作の映画)
4.2
2017年に実際に韓国で起きた事件を基に作られた社会派作品。
ぺ・ドゥナが出演してることもあり鑑賞。

職業高校に通う女子高校生、学校から紹介された大手通信会社の下請けのコールセンターで実習生として働き出すが、そこは厳しいノルマや実習生同士を競わせて業績が下の者には厳しい叱責、そして名ばかりの労働契約書といった劣悪な労働条件のなかで心を削り、自らの命を…

前半は彼女が自死に至る過程を描き、後半はべ・ドゥナ演じるちょっとやさぐれた刑事が会社、学校、管轄の役所といった“当事者”たちにダンスが好きな普通の高校生がなぜ自ら命を断つことになったのかを追及していく。

彼女は問題児だった、こんな大事になってかえって迷惑だと平気で開き直る大人たち。会社も学校も役所も自分たちは悪くないと。そして彼女の苦しみも普段の生活も知らなかった両親。悲しい。
会社の業績の名の下に人が人の尊厳を奪っていく光景を見ながら、これって韓国だけでなく先進国ならどこでもあり得るのだろうなあと。
日本だと某大手広告代理店の過労自殺の事件は記憶に新しいし、外国人技能実習生の問題なんて同じ構図。

後半、ぺ・ドゥナが事件の闇を暴いていくのは亡くなった彼女に過去の自分を重ね合わせているからか。そしてある接点。でも最後は…
この事件がきっかけで弱い立場の彼女らを保護する法律ができたのは良かった。

極力過剰な演出を排し、人間の弱さや醜さを生々しく、そして主演の2人の心の動きを丁寧に描いていて、監督の作品に対する真摯な姿勢を感じさせられた。観終わってドーンと落ち込むけど、社会を変えるためにもこのような作品が作られることはとても有意義。
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