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あしたの少女のchiのレビュー・感想・評価

あしたの少女(2022年製作の映画)
4.0
問題の本質は何か。

原題は「次のソヒ」。日本版タイトルは変えられているが、この原題が重い。次のソヒは誰だ。
前半は実習生としてコールセンターで働き始める高校生の話。コールセンターは本当に大変な仕事だと思う。心が死んでいくよ。心を殺して無になってやらないと、ストレスで心身ともにやられてしまう。顧客からの罵倒だけでもきついのに、厳しいノルマと順位付けされる競争社会。さらに会社から何かと理由を付けられて搾取される弱い立場の労働者。人が死のうとも、悼むこともせずに進められる業務。もはや人間は会社の駒でしかないのだ。

後半はペ・ドゥナ演じる刑事が事件を追っていく話へと移っていくが、明らかになっていく現実に呆然とするしかない。ソヒにとっては高校の担任も彼女を守ってくれず、彼女の味方は誰もいなかったわけだが、学校もノルマ社会だった。教育庁だってそう。ノルマノルマ順位順位。問題の本質はそういった社会構造にあったわけだが、問題が大きすぎてなす術がない。この本質が解決されない限り、次のソヒは生まれ続けるのだ。タイトルが重くのしかかる。

韓国は日本以上に厳しい学歴社会で、大学受験戦争が有名だ。本作でも序盤に受験生の皆さんがんばれという文字がうつる。その一方で、やはり韓国にも高卒で働く人はいる。学歴社会で高卒であることは日本以上に弱い立場なのではないかと推察するが、そんな弱い立場の労働者はこの映画のように搾取される。
この映画によって、法律が改正されたそうだ。通称、次のソヒ防止法。トガニ法に続き、映画のチカラを感じられるエピソード。人間は数字ではない。人々が自分の好きなことを持って、自分らしく働いて生きていける社会になるようにと願う。
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