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あしたの少女のせっのレビュー・感想・評価

あしたの少女(2022年製作の映画)
4.8

高校の実習生制度でコールセンターで働き始めた主人公ユジンが、過酷な労働環境と理不尽な会社の制度に徐々に追い詰められ自死してしまうまでとその事件を追う刑事の話。

前半はユジンが働き始めてから自殺までを徐々に追い詰められ逃げ場がなくなっていく様子をじっくり描き、後半は刑事の操作によってこの悲劇が起きてしまうカラクリが一つ一つ明かされていく作り。

会社が従業員を搾取するという単純な構図ではなく、その企業を紹介する学校、さらに教育庁、労働庁、既に自殺者がいたのに捜査しなかった警察、、複合的な要因が絡み合っていて、その誰もが責任逃れをしてきたという構図。そうやってできたしわ寄せは全部弱き者へと行く。

後半の捜査パートで明らかになるのはその構図だけじゃなくて、大人たちの責任逃れのうまさと自分のことで精一杯でもまだ他人を思う心を忘れてない若者達。悲しいのは、企業とか学校の体制側だけでなく少女の家族や最後に少女と言葉を交わすことになる売店のおばちゃんすら自分の保身に走ること。

全く気づかなかった、忙しくて声をかけられなかったなんて絶対嘘で、おかしい事に気づいていながら何も対処しなかった。その一方で、ユジンの友達たちは、精一杯ユジンを1人にしないようには努力してた。

これを見ると、頑張って仕事するより、こちらも適当にサボって会社を搾取してやるぐらいの気持ちでいた方が良いなと思ってしまう。この、「真面目で責任感の強い努力派」ほど報われないのは、日本も同じ状況だと思うし。
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