ハンスウ

同じ下着を着るふたりの女のハンスウのレビュー・感想・評価

同じ下着を着るふたりの女(2021年製作の映画)
3.5
今日は映画の日だけど家で配信を観ました。地味な韓国映画でしたよ。このタイトルからすると、新しい下着を買えないから2人で共有するしかないっていう貧困をイメージしてしまいましたが、そうではなく、いびつな母娘関係を描いた作品でした。

今作も例によって韓国映画アカデミーの新人監督の卒業制作作品。毎年のように新人監督をデビューさせてそこそこ映画祭でも受賞するんだから大したもんですよ。今作はエンタメ性は皆無。徹底して特異な親娘関係を描いていますけど、そもそも普通の親娘はこうだ、っていうイメージは幻想でしかないのかもしれないと監督は考えたのかもしれないですね。

現実の世界にこんな親子がいるわけがないって思ってしまう人の方が多いのかもしれないけど、でもこの映画の母親は娘を愛さないし、娘は親を憎みつつもなかなか自立することができない。生理時の対処の仕方も知らずに育ち、自分の下着のサイズも分からないからその辺にある親の下着を着る。決して社会で表面化されることのない現実だからこそタイトルに「下着」とついているのでしょう。

しかし、今作はあまりにも監督の独りよがりが先行していて、わたしは好きではないです。あまりにも観客のことを無視しすぎているきらいがあります。でもそれは、映画アカデミーが新人監督に思うまま自由を与えた結果に生まれた作家性なのかもしれません。今年はすでに同じ映画アカデミー出身の監督作「ビニールハウス」という傑作にも出会えたし、次に韓国からどんな新人監督が登場するのかという楽しみはあります。
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