ジェイコブ

殺しを呼ぶ卵 最長版のジェイコブのレビュー・感想・評価

殺しを呼ぶ卵 最長版(1968年製作の映画)
3.6
ローマ郊外で養鶏場を営むマルコは、社長というのは名ばかりで、実権は妻のアンナに握られ弱い立場にあった。彼は同居するアンナの姪の若く美しいガブリと肉体関係にあり、いつかガブリと駆け落ちしようと企んでいた。そんなある日、マルコの営む養鶏場で、畸形の雛が生まれる……。
イタリアの知る人ぞ知るカルト系スリラー。
まずあらすじ読んで「いやどういうことやねん」と吹き出しそうになるのはまあ置いといて、内容は不景気により窮地に立たされる養鶏業界の真っ只中にいる養鶏家のマルコとその妻アンナの間にある釣り合わないパワーバランスにより生じたマルコの秘密が巻き起こすサスペンス。そこに制作当時(1960年代)のイタリアの経済状況や金儲けの為に犠牲となる労働者や劣悪な環境で育てられる鶏達など、資本主義社会への批判が込められている。中でも遺伝子組換えと犬の死により偶然にも生まれた奇怪な雛を、「ほとんど肉だからこれは使える! 大発明だ!」と言って喜ぶ化学者と協会の連中は正に利益のためであれば、命を軽んじることすら厭わないという欠落した倫理観についての皮肉も描かれている。
話の大筋については理解できたが、唐突なカットバックの連続や意味不明なカットイン、黒板を爪で引っ掻き回すような終始不快な音楽など、筋金入りの頭おかしい映画という触れ込みは決して嘘ではない代物の本作だけあって細部まで理解することはできなかった(恐らく何度見ても分からない気がする笑)
鶏が処理される工程や、畸形の雛をぐちゃぐちゃにして処分するマルコのシーンなどを見ても、これからチキンの需要が高まりそうなクリスマスに見るのは不適切極まりない作品笑。