このレビューはネタバレを含みます
廃品回収のバイトをしながら画家を目指す主人公・道雄の部屋、サチと待ち合わすカフェ、下町、住宅街などにキメ過ぎない差し色、画角の切り取り方がさりげなく絵画のよう。
その風景に生きる人物たちのナチュラルさよ。
トークゲスト宇賀那健一監督が、映画=総合芸術として素晴らしいチームである、と。宇賀那監督の繊細な視点から、音がいかに画を立体にしていたか気付かされました。そうか、だからこんなに丁寧できれいな画面でありながら自然な情景として観ていたのか、と。
純粋に心のままに描いていたものに、未知の価値観をあてがわれた戸惑いが、臆病な野心に変わっていくとき、道雄とサチは…? やるせない。
道雄が、帰宅してひとり、ぼーっと座る場面の、部屋のなかのぼんわりした色彩とほの暗さ、せつないんだけどキレイだったなぁ。
電車の都合でトークを最後まで聞けず残念でしたが、役者であり監督である片山享監督と宇賀那健一監督のお話は、計算と即興の境界のなさを生み出す演出についても言及、密度の濃い内容でした。また観たくなってる。
【追伸】ひとつだけ気になったこと。
下描き中の、人のアート作品を勝手に手に取って、続き描いて、て言うのはいかがなものかと思った。彼が笑顔で受け入れるのは、好意があるから?んー、私だったらそれをやられた瞬間好きじゃなくなるかも、てちょっと思った。
この引っかかりがなければ、4.0。